被災地発の自転車イベントはなぜ実現したか

巨大イベントを実現させた、もうひとりの"爆速男"

地元メディアの底力

当時、「ヤフー石巻復興ベース」はオープンしたばかりで、仕事は山のようにあった。そんな時期ではあったが、ツール・ド・東北の企画も少しずつ進めるよう須永は独自に動いていた。

われわれメンバーに何をやっているか告げず、ひそかにイベントの説明のため宮城県庁へ、また協力を求めに警察へ、そして万が一のけがを考えて救急の手配のため消防や病院に……。接触した団体や関係者は東京で20以上、東北では30を超えていたそうだ。

これだけの大規模イベントをやるのには、地元・河北新報社の支えが欠かせなかった

勝手知ったる東京はともかく、民間の一企業であるヤフー社員が、東北の公的な機関に話を聞いてもらうのは容易ではない。「ものすごく大変だったのでは?」と須永に聞くと、こんなことを教えてくれた。

まず、地元の主要機関や組織にお伺いを立てて回る際は、必ず共同主催者である河北新報社の担当者と一緒に、『こうしたイベントをやりたいと考えている』と説明してもらったという。話の主はつねに河北新報社で、ヤフーはそれを支える側というポジションに徹したのだそうだ。

地方において、地元メディアの存在は圧倒的だ。おそらくヤフーだけでは、門前払いだった団体や組織も多かったことだろう。

そのことを重々念頭に置いて、東北における河北新報社の圧倒的存在感を背景に、交渉を進めていったようだ。

実際、石巻でわれわれがいろいろな人に受け入れてもらえているのは、河北新報や三陸河北の恩恵も多いと思う。

「ああ、あの河北のビルに入ってる会社ね」という会話で、あっさり本題に入れることも多い。

とは言うものの、自転車イベント開催の話を受けて、地元の人は賛否両論があったと聞いた。

僕たちが普段、接しているのは、新しい仕事に取り組み、現状を打破しようと前向きに頑張っている人たちだ。だから、そういう人たちはツール・ド・東北についても「ぜひ、やって!」「何でも手伝うよ」と言ってくれた。

一方で、「そっとしておいてほしい」「東京から遊びに来る人たちに東北を踏みにじられたくない」という声もあったという。

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