被災地発の自転車イベントはなぜ実現したか 巨大イベントを実現させた、もうひとりの"爆速男"

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支社オープンの日、河北新報社の一力雅彦社長と宮坂、僕たちも出席して会食が行われた。その機会を宮坂が逃すはずがない。

「ツール・ド・東北みたいに自転車で何か復興イベントがやりたいんですよ」

と、一力社長に早速打ち明けたのだ。すると一力社長は

「いいね。うちは昔、やっていたからやろうよ」と快諾してくれた。

そんなやり取りのあった翌月、プロジェクトは本格的に進み出した。

宮坂はエネルギーあふれる人なので、ちょっとした思いつきを含め、日頃から社員にさまざまな提案を投げかけてくれる。が、それを実際にやるかやらないかは言われた本人(社員)次第。とんでもない話だが、社長からの話を、われわれはスルーしてしまうこともある。

今回の立役者は、復興支援室長の須永(写真中央)だ

普段なかなかの「スルー力」をもつ須永だが、この企画については、宮坂からの打診をしっかりとキャッチしていた。「筋がいいと思った」そうだ。

「参加型の何か」「被災地に人を呼べるもの」

そんな起爆剤っぽい大掛かりなものを、石巻でいつかやってみたいね、と僕も須永と話していた。

ツール・ド・フランスは世界3大スポーツイベントと呼ばれ、自転車レースは世界屈指のファン数を誇るものとして認知されている。けれど、日本ではまだまだそこまでは盛り上がっていない。

ぶっちゃけた話、須永は大のラグビーファンで、当初は自転車なんてこれっぽっちも関心を持っていなかった。

「なんでチャリンコのイベントやろうと思ったんですか?」と聞いてみると、須永からはこんな答えが返ってきた。

「ユーザーが参加する大規模スポーツイベントという点に、大いに興味をそそられた。復興支援とはまた別の観点だけど、すでにメジャースポーツとして有名なサッカーや野球より、まだまだマイナーな印象の自転車レースを日本で育てる過程に、ヤフーがかかわれるならすごく意味があると思ったのよ。

宮坂さんの構想は、数千人規模のレースで、ワールドツアーに選ばれるくらいのものに育てよう!という骨格ができていた。前から実現したいと思っていた東北ツーリズムや“民泊(みんぱく:ホテルや旅館の代わりに、一般家庭や公民館などで宿泊客を受け入れること)”なども、そこに掛け合わせて実行できるんじゃないかとも思ってね」 

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