江戸前ずしは、江戸時代東京湾で捕れた魚を、酢や塩で締めたり、タレに漬け込んだりして、日持ちするよう工夫したすしである。
大阪ずしは、起源は平安時代まで遡る発酵ずしだ。発酵ずしでは、なれずしが代表的だ。巻きずし、バッテラずしなども、大阪ずしと呼ばれる。
どちらも現在の主流のすしではないが、大いにすし職人の腕が試されるすしである。
文献をたどり古い技術を再生させることも
「『おすしの店』にしたかったので、あてもの(おつまみ)は極力置かないことにしました。心から『すしを食べたい』と思ったとき、うちを選んでほしいですね。
今はすしバーを名乗ってますが、すし好きが集まるすしサロンにしたいと思ってます。空間を楽しんでもらいたいですね」
近藤さんは自分のことを“すしオタク”だな、と自覚している。美味しいモノには貪欲だ。
文献をたどり古い技術を再生させることもある。また、たまたま食べに行った、ミシュラン二つ星のレストランのメニューを再現する。頭の固い人には邪道と呼ばれる技法だって、美味しければドンドン取り入れていきたい。世界各国の食材加工の技術(たとえば鶏をヨーグルトに漬け込んだタンドリーチキン)もいつかすしに応用できると思っている。
「夢は大きかったですが、いきなりすし屋の収入だけで運営していくのは厳しいですから、お昼はスーパーで働きました。当初はお昼の稼ぎで家賃を払っていました」
“丁寧に仕事をしたすし”を提供するということは、つまり作業時間が長くかかるということだ。スーパーで働きながら、すし屋をするのはとても大変だった。
「朝8時に起きて市場に行きます。買った魚はいったんバイト先のスーパーの冷蔵庫にしまって、それからはスーパーの仕事をします」
松寿しは狭いため店内で仕込み作業ができない。14~15時に仕事を終えて、実家のすし屋へネタを持っていき、そこで急いで仕込みをする。お米も炊く。
「ここ(松寿し)で仕込みをしたほうが効率がいいのはわかっているんですけどね。こればっかりは仕方がないです」
仕事をしたネタやシャリを持ってお店に向かい、19時にお店をオープンしていた。
そんな忙しい日々を送っていたが、同時にお客さんを呼び込む努力もしていた。
「知り合いのバーで開催したすしイベントに参加しました。サービス価格でまずは皆さんに僕のすしを食べてもらって、自分の腕を見てもらいました。
すし屋をオープンして、友達が食べに来てくれるか? というとそんなことは全然ないんですよ。腕の保証がないと、友達だって来てもらえません。そうやって、食べていただいて自分の腕を知ってもらいました」
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