決断力を磨くためには現場の修羅場も必要だ サントリー新浪社長が培った意思決定力
成功の保証はないけど意思決定するのが「決断」
――『サバイバル決断力』では「意思決定」や「決断」の重要性を述べていますが、そもそもこの2つにはどんな違いがあるのでしょうか?
印南:意思決定は、ひと言でいえばいくつかの選択肢の中から「判断」して「選択」することです。判断するために客観的な情報収集を行い、それをもとに成功する確率を計算するなど、さまざまな角度から分析して選択します。決断は意思決定に含まれますが、中でも不確実性があって成功する保証はないけど、一定のリスクを取って意思決定することを指します。企業の新規事業への進出やM&Aなどもそうですが、個人でいえば結婚や転職なども「決断」の部類に入るといえます。
新浪君は今までに大きな決断をいくつもしています。商社時代に留学のための休職制度がない状況下でハーバード大学への留学を決意したこともそうだし、商社を辞めるとき、サントリーの社長に就くとき……etc。まさに「決断のプロ」だね(笑)。
新浪:いやいや、今でも決断する自信があるかといえばないものですよ(笑)。そうはいっても経営者の立場にあるから、プロとして日々決断をしています。今、決断したことが将来正しいかどうかはわからない。だけど、一度決めたら躊躇せずにいくようにしています。もちろん、すべての決断が成功してきたわけではないし、失敗することもありました。でもそれが糧になって次の意思決定や決断につながった部分はありましたね。
印南:『サバイバル決断力』の巻末では、「モタ先生」こと精神科医の斎藤茂太先生(1916~2006)の「人生に失敗がないと、人生を失敗する」という言葉を紹介しているけど、まさしくその言葉どおりだね。
新浪:僕は若いうちから決断が迫られる立場に立たせてもらったけど、それがよかった。自分で決断する状況に追い込まれないと、決断力は身に付きませんからね。早いタイミングだったので、失敗しても取り返しがつく。決めるときにはいろんな助言や示唆をもらい、毎日スピーディーに決断し、意思決定したときにはそれを論理立てて説明する。それをずっと積み重ねてきて、今があるのだと思います。MBA取得のためのビジネススクールでは竹光(竹を削ったものを刀のように見せたもの)は与えてくれるけど、それを本物の刀にしていくには決断を重ねていかないといけない。だから僕は、決断力というのは現場の修羅場で最も身に付くものだと思っています。
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