ところが、ついにジェームズ・マティス国防長官が辞任してしまい、彼を含めて影で支えてきたMMT(ハーバート・マクマスター氏とレックス・ティラーソン氏)がこれですべて閣外に去ることになりました。
ウォールストリートとしても「さすがにこれはまずいのではないか」、と思い始めた、というところが真相でしょう。今まではMMTがいたので、トランプ大統領の意思とは別に、複雑な案件はうまく処理されてきました。しかし今や、アフガニスタン撤退やISIS問題をめぐってトランプ大統領の意思が見えてしまったわけです。これは深刻です。
ですから、市場から見ると、今年の最大のリスクはやはりトランプ大統領そのものと言ってよく、その延長線上に昨年末からの株式市場の混乱があるとみていい、と思います。
「米中新冷戦」は米中だけの問題ではない
米中に関して言えば、貿易問題などは言って見ればどうでもよく(あまりにも事態を矮小化しすぎている)、むしろ「新冷戦」であらわされるような新たな敵対関係、いわば米中関係の「デカップリング」という観点から見ることが非常に重要だと思われます。
冷戦というのは第2次世界大戦後の米ソ関係を表したものですが、その対決の中身はマルクス・レーニン主義と資本主義という、いわばイデオロギーの対立に過ぎず、経済的観点からは何の影響もなかったわけです。
つまり、ソビエト連邦という国は軍事力を背景に、政治的には力を持っていましたが私がモスクワに駐在していた1985年まで見ても経済的には西側諸国に対しては「全く無影響」の状態でした。事実、その後ベルリンの壁が崩壊し、ソビエト連邦自身が解体しても、われわれには経済的にはほとんど何ら影響はありませんでした。
しかし、中国の場合は話が違います。単なるイデオロギー闘争のレベルでも、単なる貿易紛争のレベルでもなく、根本的な米中デカップリング化、ともなれば、サプライチェーンからはたまたデジタル技術規制に至るまで、その影響はとてもじゃないですが「没問題」というわけには行きません。
例えば先ほどお話したUSMCAについてみても、なぜか日本ではほとんど報道されていませんが、「参加国が非市場経済国とFTA(自由貿易協定)を結んだ場合、他の2カ国は6カ月後に協定を離脱し、2国間の協定を結ぶことができる」という一文が入っています。
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