バブル崩壊の「わかりやすい号砲」が鳴った ドル円乱高下、「105円割れ定着」はあるのか

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新年早々ドル円は一時104円台に(写真:REUTERS/Thomas White/Illustration)

日本時間1月3日早朝、ドル円相場は2018年3月以来の安値となる1ドル=104.10円をつけた。米中貿易戦争、政府機関閉鎖、これらを受けたアメリカの金利低下やアメリカ株安への不安が強まっていた。そこへ、同日、アップル社が業績予想の下方修正を発表したことが、もともと投資家にあった世界経済減速の疑いを確信に変えさせた格好である。

しかも、下方修正の理由が「中国での販売不振」であったことも不安を一段と高めることに寄与したと見受けられる(ただし、スマートフォン市場の飽和感に基づいた下方修正であって、米中貿易戦争が直接原因ではないとも思われる)。その後、ドル円は買い戻され、本日東京時間午前では1ドル=107~108円を推移しているが、1カ月前に比べ水準は明確に切り下がった。

バブル崩壊にはえてして「分かりやすい号砲」が必要である。10年前の前回はそれがパリバショックやリーマンショックと呼ばれた。今回はアップルショックの名の下に価格調整が拡がっていると理解すべきだろうか。なお、2日には12月分の中国製造業PMI(購買担当者景気指数)が49.7と1年7カ月ぶりに景気の拡大・縮小の判断の分かれ目となる50を割り込むという動きがあった。そのほかの主要国も軒並み悪化しており、もはや世界経済がピークアウトしていることは否定しようがない。

また、余談になるが、こうした動きは日本勢「だけ」が世界の大勢に逆らって長期間休む年末年始やゴールデンウィークによく発生する印象がある。すでに報じられているように「日本の個人投資家のロスカット誘発を狙った仕掛け」という解説は今や風物詩のようになっているように感じる。過度なショックを回避するという視点に立てば、金融市場の運営に限っては世界基準に合わせることも決して絵空事ではなく検討してもよいのではないか。

「仕掛け」が奏功する大前提を忘れずに

今回の動きも「日本勢が休みの薄商いの時間帯が狙われた仕掛け」という理解で収めるべきか。一面ではおそらくそうなのだろう。だが、本質的に重要な論点はそこではないはずだ。そもそも「(ドル円やアメリカの金利に対する)下方向への仕掛けが成功する」という大前提として「世界経済減速とそれに伴うFRB(連邦準備制度理事会)の政策修正」がある。そうでなければ仕掛けが奏功する勝算がない。

もともと暗澹(あんたん)たるムードが存在したらこそ、仕掛ける短期筋がいたと考えるのが論理的である。今回、104円台への突入は一時的ではあったが、円高局面は激しいボラティリティの中で「3歩進んで2歩下がる」といったように水準を切り下げていくことが多い。

短期的な理解として「仕掛けである」は正しいが、中長期的な理解として「世界経済が『改善の極み』に達している」ことを忘れてはならない。まだFRBは公式には「2019年に2回」が政策金利の予想中央値である。これが雲散霧消する中での相場の水準調整に備えておくことが賢明だろう。

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