●これに対して、米欧がデフレ縮小化へと真っ逆さまに転落していくにもかかわらず、わが国が、有り余る富をもって傍若無人に振舞うのは耐えられないと考えるのであれば、真逆の手段をあらかじめ講じるしかない。徹底して富を日本から奪い、私たち日本人が気づかない間にその牙を抜いておくのである。無論、「危機の時代」となる2015年前後に日本社会で働き盛りとなる「団塊ジュニア世代」は徹底して無視されるように仕向けなければならない(PLAN B。事実、この世代は不思議とわが国のメディアによって無視され続けてきた)
●以上のような2つの「選択肢」の大前提として“セファラディ”たちが目を付けたのは、何といってもわが国が抱える、いびつな人口ピラミッドだ。「団塊の世代」(1948年~50年生まれ)がダントツに多い我が国が危機に瀕することになるのは、この世代が65歳となる2012年頃からである。なぜならばこの世代がいよいよ基礎年金を受け取り始めるからであり、2015年にこの世代の全てが年金受給者となった段階で、わが国の国家財政は究極の危機の時代を迎えることになる(現在までの推移を踏まえると、公的債務残高は2015年度末までに対国内総生産(GDP)比で270パーセント以上になる)。
にっちもさっちもいかなくなったところで、果たして日本人は「覚醒」するか否か。いやもっと言えば国民経済を立派に担う人数と能力を持った「団塊ジュニア世代」が覚醒し、動き出すか否かが焦点となってくる――。
”セファラディ“たちが創り上げた金融資本主義の中心、それがロンドン・シティだ。もっとも私が知る限り、少なくとも今年の初夏くらいまで彼らはわが国へと殺到する勢いを表向き見せてはいなかった。実際、ロンドン・シティの内奥を知る人物たちと会話をしても、「アベノミクス?まぁせいぜい日本株が久々に上がる程度だろう」と軽口をたたいていたのである。
しかし私が知る限り、こうした流れがいきなり変わったのは今年の9月終わり頃だ。ロンドン・シティからは「12月頃」を目途に人が直接、東京に出向いてくることがいきなり決まり始め、それと同時に新しい金融商品の組成が提案され始めた。しかも聞くところによるとそうした金融商品で提示されている条件が買い手である私たち日本人にとって余りにも良すぎるのである。そうした状況を垣間見るにつけ、私はこう思ったものである。
「ロンドン・シティは間もなく我が国に殺到し始める。この“ジャパン・ラッシュ”を控え、懸命に私たち日本人と関係性を構築しようとしている」
だがこうした流れに「それ」として気づいたエリートたちは、わが国の政官財の中で皆無だった。特にわが国の金融セクターは悲劇的な状況であり、ロンドン・シティから吹き始めたこうした「風」を全く感じていなかった。政治においては明らかに米国を意識した国家安全保障会議(NSC)の設置が喧しく議論されたものの、それとロンドン・シティ、そしてそれを支える“セファラディ”たちの文明史的な動きとをリンケージさせて論じる向きは皆無だった。外交・防衛の世界では、着々と「日英同盟の復活」が密かに語られ始めているというのに、である。
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