今年こそ!企業で広がり見せる「禁煙」支援 ロート製薬は「卒煙ダービー」で後押し

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禁煙は何より本人にその気になってもらうことが大事。だが人によって刺さるタイミングが違う。「何があっても絶対にやめない層は一定数いるが、上手にきっかけを作れば何気なく禁煙を始める。こういった行動経済学や脳科学的な要素も含め、どのようなタイミングでどのように伝えればいいかの検討を重ね、根気よく実践していきたい」(播磨氏)。

こういった企業の取り組みの背景には、顧客の喫煙率低下もある。また、就業時間中に何度もタバコ休憩に行くことによる業務効率低下や、タバコ由来の疾患による医療費負担も指摘されている。

卒煙でCOPDのリスクも下げる

喫煙は、肺がんをはじめとする多くのがんや、脳卒中、虚血性心疾患など循環器系疾患に深刻な影響を与えるが、もう1つ、患者の90%以上が喫煙者という病がある。COPD(慢性閉塞性肺疾患)だ。タバコ病とも言われ、2018年7月、落語家の桂歌丸さんが亡くなった原因となった。喫煙者の15~25%がかかると言われ、日本では男子の死亡原因の8位、世界では3位となっている。

気管支や肺の細胞が炎症をおこし、肺胞が破壊されて弾力を失い、機能を失っていく。全身が酸欠状態になり、「細いストローで息をしながら階段を上るような」(大手製薬会社、グラクソ・スミスクラインの張家銘部長)苦しい病気だ。治療は症状の緩和と進行を遅らせるのみ。予防には禁煙しかない。受動喫煙でも発症し、原因物質が特定されていないため、加熱式たばこも安全とはいえない。

国内で治療中の患者は26万人と一見多くはないが、潜在患者は530万人とも言われ、9割が未診断・未治療の状態にある。厚生労働省では2013年に「2022年認知度80%」の目標を掲げたが、2018年12月時点の認知度は28.1%(GOLD日本委員会COPD情報サイト調査)で、その半数以上が「聞いたことがある」程度だという。

認知度が低いために適切な診断や治療がされず、病状が進行して初めて発覚する。初期症状は息切れや咳、痰などで、加齢によるものと軽く見て、禁煙を拒む患者すらいる。2018年9月にはグラクソ・スミスクラインと沖縄市、慶応大学が組んで、早期診断と適切な治療のための支援システム構築に取り組み始めた。が、まだまだ緒に就いたばかりだ。

一般企業による禁煙支援は、社員の疾患に対する認知が進むきっかけにもなる。健康経営を掲げる企業が増える中、こうした取り組みは今後も広がりを見せそうだ。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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