東洋思想の根源に学ぶ幸せな子どもの育ち方 親は子どもにどんな生き方を勧めるべきか

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質問 子どもに幸せになってもらいたいと思いますが、「幸せの形」をどのように伝えればいいでしょうか?  そもそも親が「幸せの形」をわかっていないように思います。 

田口:幸福のもとになるのは、私たちに生まれながらに備わっている心の本体、「明徳仏性」というものです。先ほども「徳」とは、人間に備わっている善き性質である、と述べましたが、私なりの言い方をすれば、「徳とは、自己の最善を他者に尽くし切ること」です。

持って生まれた徳を素直に出すことが「明徳」ですから、つねに「自己の最善を他者に尽くし切ろう」という精神をもって生きることが「明徳をわきまえた生き方」です。

明徳を常にわきまえているということは、何事に対しても、欲深くなく、怒らず、頑固でなく、面倒だと思わないということ。

どんなときでも「この人の役に立てることはないかな」「期待されている以上に喜んでもらえるやり方はないかな」と考えて動くわけですから、どんな人にも感謝され、「ありがたい」と言ってもらえるでしょう。本人も幸せな心持ちを手にすることができる。

「自己の最善を他者に尽くし切る」

今の時代、「幸せ」というと、お金や名誉や地位など、外から得るもの・与えられるものだ、というイメージを持っている人も多いですが、本当の「幸せの形」とは、「自己の最善を他者に尽くし切る」という徳を生きていることだと思うのです。

『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』(光文社新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

中江藤樹が女性のために書いた『鑑草(かがみぐさ)』という本があります。ここに役に立つことが書かれています。

「つくづく世間で言っている幸福というものに思いを巡らしてみれば、身体が健康で、心は平穏、そして自分の子孫が代々繁栄することが最上の幸福だと思われる」と書いてあるのです。

「長生きすることはその次。地位や名誉を得て裕福になることは、幸福としては最後に来るものである」と。

ここが重要なところです。

「地位や名誉を得て裕福になることは、幸福としては最後に来るもの」という中江藤樹の言葉も、幸せの形を教えてくれています。

田口 佳史 東洋思想研究家

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たぐち よしふみ / Yoshihumi Taguchi

1942年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。新進の記録映画監督として活躍中、25歳のときにタイ国で重傷を負い、生死の境で「老子」と出会う。以後、中国古典思想研究に従事。東洋倫理学、東洋リーダーシップ論の第一人者となる。著書多数。

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枝廣 淳子 幸せ経済社会研究所所長、大学院大学至善館教授

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えだひろ じゅんこ / Edahiro Junko

東洋と西洋の知の融合研究所主席研究員。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境・エネルギー問題を機に新しい経済や社会のあり方を研究。レジリエンス(しなやかな強さ)のある幸せな未来の共創をめざし、政府委員会や企業の支援、地方創生に携わる。近著では個人の幸福度を高める生き方のヒントを紹介。

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