東洋思想の根源に学ぶ幸せな子どもの育ち方 親は子どもにどんな生き方を勧めるべきか
ビジネスの世界での「基本」とは何でしょうか? まずは、「正しく聞く」こと。それから、「正しく書く」「正しく話す」「正しく読む」ことです。「読む」「聞く」というインプットと、「書く」「話す」というアウトプットに加えて、もう一つ「正しく考える」こと。存外できている人は少ないのです。
「正しく考える」とはどういうことか?
大変に大事なことなので、詳しく説明しましょう。「正しい」という漢字を見てください。先ほど述べたように、「正しい」という漢字は、「一」に「止」と書きます。「この線で止まれ」ということなのです。「正しい」とは、線に接して足を止めることです。
この線を「基準」「規範」といいます。江戸期には「規矩」といっていました。「規」はコンパスのこと、「矩」は物差しのことです。ちなみに、英語では規範のことを「norm」といいますが、これも大工の「定規」の意味です。私たちがよく「ノーマル」というnormalとは、基準に適った言動のことです。
江戸期にわが国で確立した規範は、仁(人間性)、義(社会性)、礼(社会性)、智(人間性)から成っています。従って「正しく考える」とは、人間性や社会性に適っているかを考えることなのです。
質問に戻りますが、「親として子どもにどういう生き方を勧めたらよいか」と問われれば、「正しく考える」「正しく生きる」、そして、「良い人生というのは、基本が重要なんだ」ということをまず教える必要がある、と答えます。
東洋思想はまさに、「根本」や「根源」を重視するものですから、良い人生に非常に役立ちます。そして、基本を学ぶにも「素直」かどうかによって、その学び方や学べるものも大きく変わってきます。
「素直」であることの重要性
もう一つの根本は「命」です。命を守るために何が重要なのかというと、「人之生也直」、つまり「素直」であることです。
たとえば、「それはよくないぞ、やめたほうがいいんじゃないか」と言われたら、「そうだな」と思ってスッとやめる。人間は習慣の生き物だから、悪い習慣ばかりだったら命も短くなってしまいます。
素直な人のほうが、忠告を素直に聞くから、伸びる。もちろん誰の言うことでも聞くという意味ではありません。本気で自分のことを心配し、考えてくれている人の言葉は素直に聞く、ということです。
それから、「素直」には、「心の正しさ」も入っています。心が正しいというのは、「この線で止まれ」という、ものの判断や行動の基準が明確にできているということです。だから、踏み外すことがない。さらに、「素直」の中には「穏やかさ」もありますよね。穏やかな人間は人望の厚い人間になる。それだけの要素が「素直」の中にあるということを『論語』はいっているんです。
長い答えになりましたが、「どう生きたらよいか?」と尋ねられたら、「素直な人間として正しく生きること」と思います。