ついに戦国時代に突入したECサイト ヤフー、楽天、アマゾン…3社の戦略の違いが明確に

拡大
縮小

EC市場は今後5年で20兆円規模へ倍増

こうした動きを追い風に、「BtoC EC市場」の規模は、2012年度の10兆2000億円から、年率13%の成長を遂げ、2018年には20兆8000億円まで成長すると予測される。

成長が期待できる分野としては、生鮮食品を含む食品や、衣類・靴などのファッション関連商品のEC利用が伸びるほか、今後は医薬品のEC化も進む見込みである。

生鮮食品は、インターネットで注文を受けて自宅まで配送する「ネットスーパー」を提供する企業が増えることと、ECサイトで購入した商品の即日配送や翌日配送のインフラが整備されることで、ECの利用が促進される。

現在、多くの大手スーパーでは、ネットスーパーのサービスが提供されており、今後も都市部を中心に利用が拡大する。現在の利用者の中心層は20歳代から30歳代の共働き世帯や子育て世帯であるが、各社がサービス認知の向上に努めていることから、徐々に利用者層は拡大していく。

衣類・靴などのファッション分野については、大手ECサイトが強化を進めている。楽天によるスタイライフの買収(2013年3月)、ドコモによるマガシークの買収(同)のように、既存のファッションECサイトを大手企業が買収する例のほか、KDDIによるorigamiへの出資(2013年4月)、ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイによるブラケットの買収(2013年7月)など、ベンチャー企業が提案する新たなEC形態への投資も盛んだ。

また、ファッション分野を中心に、無料返品サービスが拡大しつつあることも、市場の拡大を後押しする。衣類や靴は、生地の質感やサイズなどが画像だけでは伝わりにくいため、実際に手に取り、試着して購入することが一般的であり、ECサイトでの購入に抵抗がある人も多かった。

無料返品サービスは、購入してから一定の期間内(30日程度が一般的)であれば、返品、交換を無料で受け付ける仕組みである。アマゾンやゾゾタウンなどの大手ECサイトや、靴専門サイトなどが同サービスを提供している。この仕組みにより、消費者は、たとえばMサイズとLサイズの服を両方買ってみて、自宅で試着し、サイズの合わないほうは返品する、という買い方が可能になる。リアル店頭に劣らないサービスを受けられるようになるため、よりECを利用しやすくなる。

EC市場は、前述のとおり、今後5年は年率13%程度の成長で推移するが、既存のリアル市場を切り取って大きくなっているということもまた事実である。

その一方で、個人型EC構築サービスなどの新しい流れにより、日本経済の成長に寄与するような新たな市場を生む可能性があり、あらゆる業界を横断して成長を続けるEC市場から、2014年も目が離せない。

『ITナビゲーター 2014年版』
野村総合研究所
ICT・メディア産業コンサルティング部 著
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田中 大輔 野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部上級コンサルタント

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たなか だいすけ / Daisuke Tanaka

2002年野村総合研究所入社。主にITや携帯電話・スマートフォンを活用した新規事業創造や決済サービスに関するコンサルティングに従事。出張するたびに当地のIC乗車券を購入して帰ってくるが、それは趣味ではなく仕事のため。共著に『2015年の決済サービス』(東洋経済新報社)、『スマートマネー経済圏』(日経BP社)など。
 

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