「松坂世代」37歳實松の何ともしぶとい戦い方 3人の子供と歩む「親子の絆」とその後の物語
實松が歩んだファイターズでの今年1年間
2017年11月某日。
ファイターズのオファーを受け取ってから初めて行う長男・海翔君とのキャッチボール。どこか晴れやかで、澄んだ瞳を向けながら投じてくる1球、1球を受けながら、實松一成の脳裏には自分のために涙を流してくれた息子の姿がよみがえっていた。
〈まだ12歳なのに、いろいろと考えて、心配してくれていたんだな〉
〈家族のためにしっかりやらないといけない〉
改めて、感謝の思いを乗せて、ボールを投げ返した。
「パパ、キャッチボールしてよ」と誘われて行うのが日常だったが、この日ばかりは、いつも以上に特別な触れ合いに感じられた。
1980年度生まれのプロ野球選手は松坂大輔(現・中日ドラゴンズ)を筆頭に、各球団の主力として活躍する選手が多く、「松坂世代」としてメディアに取り上げられることも多い。そんな彼らもベテランと呼ばれる年齢となり、このオフも通算142勝の杉内俊哉や通算360本塁打の村田修一らが引退。来季もNPBで現役を続ける選手は現時点で、残り8人となった。
1998年のドラフトで世代ナンバーワン捕手として佐賀学園から日本ハムの1位指名で入団した實松もその1人。
プロ2年目から1軍の試合を経験し、4年目には82試合に出場。2006年にトレードで巨人へ移籍すると阿部慎之助の控え捕手としてチームを支え続けた。だが、2017年シーズンのオフに戦力外。通告を受けてからの日々は長く感じたと回想する。