無印、初の「冷凍食品」が大ヒットした舞台裏 主食からおかずまで、発売直後は品薄状態に

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実務的な面でも、売り場に冷凍庫を設置するための電源の確保や、冷凍専用の物流体制の構築など、部門を超えた連携を求められた。試行錯誤の末に出来上がった冷凍食品だが、物珍しい品ぞろえが注目され、9月末の発売以降、想定を上回る売れ行きが続く。

特にキンパやフレンチトーストなどの人気が高く、「現場からは『発注が(冷凍食品で基本としている)週2回では足りない』という声も上がっているので、物流のあり方などは状況を見て考える必要がある」(鈴木課長)。

新たな顧客獲得につなげる

冷凍食品だけでの数値目標はないが、今後も取り扱い店舗は拡大し、さらなる新商品の展開も視野に入れる。食品は衣料品や生活雑貨と比べて利益率は低いが、日常的に購入する商品が多いため、顧客の来店頻度の向上にもつなげる狙いだ。

おにぎりは今回発売した冷凍食品の中でも売れ筋商品の1つだ(写真:良品計画)

さらに冷凍食品の発売で出店エリアの幅の広がりも期待できそうだ。現状、無印の店舗の多くは商業施設内の雑貨や衣料品のフロアにある。だが、食を前面に出した商品構成の店舗ならば、食品フロアや商店街など出店先を広げて、新たな顧客獲得につなげることができる。そうした店舗展開の際には、カレーやお菓子のような嗜好品だけでは力不足であり、冷凍食品が強力なアイテムとなることは間違いない。

2019年4月、東京・銀座に開業するホテルやレストランを併設したグローバル旗艦店でも、冷凍食品や産地直送の青果を販売予定で、「食」にフォーカスした大型店となる。食の分野でも独自のこだわりを追求する無印の挑戦は、今後も勢いを増していきそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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