ドローン専業メーカー、「赤字上場」の勝算

自律制御システム研究所が上場で目指すもの

自律制御システム研究所は2016年から楽天とドローンを用いた配送サービスを実施している(撮影:尾形文繁)

12月21日に商業用ドローンメーカーの自律制御システム研究所が東証マザーズ市場に上場する。公募価格は3400円、上場時の時価総額は約345億円を見込む。世界初の商用ドローン専業メーカーの上場とみられるが、それゆえにさまざまな思惑が交錯している。

自律制御システム研究所は2013年、千葉大学の野波健蔵・名誉教授が率いる大学発ベンチャー企業として設立された。野波氏はNASA(米航空宇宙局)の元研究員でもあり、日本のドローン研究において象徴的な存在である。

上場の目的を会社は「知名度と信頼、資金調達の柔軟性の3つを獲得すること」(自律制御システム研究所の早川研介CFO)とする。上場にあたっては、大株主である東大系のベンチャーファンド、試作・金型の菊池製作所、野波氏、楽天らが持ち株を売却。会社側も新株発行で約28億円を調達し、研究開発費や製造関連費、人件費などに充当する計画だ。

技術力で優れる自律制御システム研究所

ドローンの市場は娯楽用、商用、軍事用の3つに分かれる。2010年代に空からの撮影(空撮)用途で娯楽用ドローンのブームが到来した。それが一段落し、ここ数年では設備点検や建設現場の測量、農薬散布などの業務に用いる商用ドローン市場が立ち上がり始めている。

商用ドローン業界のビジネスモデルは、単なるドローンの機体販売だけではない。娯楽用の空撮向けドローンの場合は機体販売がすべてだ。しかし、商用ドローンビジネスは機体販売を軸とした導入コンサルティングに、システム維持・管理といったアフターサービスも加わる。

日本にはエンルートやプロドローンといった商用ドローン専業メーカーが存在する。その中でも、自律制御システム研究所が際立っている点が2つある。「フライトコントローラー」と「自律制御」の技術だ。

1つ目のフライトコントローラーは加速度・気圧センサー、そしてGPS(全地球測位システム)情報などを処理・制御するコンピューター。ドローンの飛行姿勢を安定させ、飛行位置を把握する重要な役割を担うため、心臓部とも頭脳とも言われる。

フライトコントローラーの完全内製化には各社が挑戦している。しかし、ほとんどの企業は世界最大手である中国のDJI製のフライトコントローラーを、一部の機種に採用せざるをえないのが現状だ。

フライトコントローラーの性能は、飛行履歴を参考にして向上していく。DJIはドローンブームのきっかけとなった娯楽向け市場で、シェアの過半数を獲得し膨大な飛行履歴を収集してきた。

結果、「世界の誰も追いつけない」(業界動向に詳しいドローン・ジャパンの春原久徳会長)という高性能なフライトコントローラーを作ることができたのである。

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