ソフトバンク上場、「配当性向85%」のなぜ? 史上最大のIPO、誰がために鐘は鳴るのか
12月19日、ソフトバンクグループ傘下の携帯電話事業子会社、ソフトバンクが上場する。
ある60代の女性は、大手証券会社の担当者から「年間配当利回りが5%を超える銘柄は珍しい」「機関投資家への割り当てが少なく、上場後に彼らが購入すれば上昇が見込める」と勧められ、「300株を購入した」という。ただ、「通信障害もあったし、少しでも値が上がったら売るつもり」(同女性)だ。
ソフトバンク株に踊る証券会社
ソフトバンクグループの売り出し調達額は約2.6兆円。東証1部の1日の売買代金に匹敵し、1987年のNTT上場時(約2.3兆円)を上回り、過去最大の規模となる。
超大型上場は日本取引所グループ、主幹事証券団の威信をかけた案件だ。今回の主幹事証券団には野村証券、大和証券など6社が名を連ねる。
今回上場するソフトバンク株のウリは、利回りの高さだ。配当性向は85%を目安とし、上場企業の平均約30%、NTTドコモの49.6%、KDDIの38.2%(2017年度実績)を大きく上回る。
配当額を株価で割った年間配当利回りは5%で、この数値をセールストークに用いるため、売り出し価格の仮条件は1500円の一本値で決められた。これまでブックビルディング方式では仮条件価格に幅を持たせ、需給動向を見たうえで決定してきたが、一本値は初めてだ。
証券会社にとって、ソフトバンクグループは約18兆円の有利子負債を抱え、10兆円ファンドを運用する上得意様。一般的に主幹事証券の手数料は3%程度とされる。今回は規模が大きいためやや下回るようだが、それでも巨額の手数料だ。テレビCMやネット広告、積極的な営業でムードを盛り上げる。
だが、祭りの後に待っているのは楽観できない現実だ。ソフトバンクグループはソフトバンク株の37%弱を売却する。この比率をめぐっては、かねて親子上場による利益相反が懸念されてきた。
大株主であるソフトバンクグループの都合で、ソフトバンクに不条理を強いれば、ソフトバンクの少数株主の権利や利益が損なわれるという問題だ。