ソフトバンク上場、「配当性向85%」のなぜ? 史上最大のIPO、誰がために鐘は鳴るのか

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ソフトバンクグループ単体の利払い費用は2620億円(2017年度)。これまでソフトバンクグループは、ソフトバンクからの巨額の配当を吸い上げ、利払いに充ててきた。

2017年度までの3年間で、ソフトバンクの配当性向は100%を超え、3.1兆円を配当している。ソフトバンクの純利益を4200億円とし、上場後の持分比率約63%、配当性向85%でキャッシュを吸い上げれば、利払いをほぼ賄える計算だ。

格付け会社ムーディーズ・ジャパンの柳瀬志樹・シニアアナリストは「ソフトバンクグループが継続的に金利の支払いをしていくには、安定性のある現金収入が必要だ。ソフトバンクグループにとって、その柱はソフトバンクからの配当になる」と指摘する。

ソフトバンクの上場で社外の少数株主への配当の支払いによる資金流出は増える。ソフトバンクグループの資金需要を考えれば、ソフトバンク株売却で得られた資金と高い配当で財務基盤の強化や戦略投資に充てるのは合理的な選択といえる。

熱狂は続くのか

こうした戦略もソフトバンクが安定した収益を稼ぎ出し続けられるとの前提に立ったもの。ところが、事業環境には逆風が吹いている。

菅義偉官房長官が8月下旬に「日本の携帯電話の通信料金は、4割程度下げられる」と発言。値下げ圧力に屈したドコモは、2019年4月以降に大幅値下げを断行し、来2020年3月期は営業減益となる見通しだ。2019年には楽天も携帯電話事業へ本格参入する。その先には、次世代通信規格5Gへの大きな投資も控えている。

ソフトバンクに責任の多くがあったわけではないが、12月6日は広範な通信障害が発生し、先行きに不安を投げかけた。

事業環境が変われば、「価格競争で収益性が圧迫され、設備投資を賄うためにソフトバンクが配当を引き下げれば、ソフトバンクグループの利払いに回すキャッシュフローが減る可能性がある」(ムーディーズの柳瀬氏)。

さらに、稼ぎ頭となったソフトバンク・ビジョン・ファンドは保有株の株価上昇が続けば利益を計上できるが、大きく下落すれば、「体験したことのない“損失”」へ逆回転する。

同じく超大型案件として2015年に上場した日本郵政グループ3社は上場当初こそ公開価格を上回る滑り出しだったが、その後は業績の低迷により株価は落ち込んでいる。

実体のない熱狂は冷めるのも早い。ソフトバンクも同じ道をたどれば、その影響はソフトバンクグループをも巻き込み、計り知れないものとなる。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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