ドローン専業メーカー、「赤字上場」の勝算

自律制御システム研究所が上場で目指すもの

自律制御システム研究所は、日本郵便が今年11月から福島県内で始めた郵便局間ドローン輸送に機体・システムを提供している。もし実験が成功し、地方の郵便局間でドローン輸送が本格的に普及すれば、かなりの需要が見込める。

だが「すでに(ほかの)先進国ではコストと墜落リスクを考慮し、ドローン物流という構想はしぼみつつある。上場は時期尚早に感じるし、時価総額も過大評価だ」(同関係者)と指摘する。

「上場ゴール」は困る

別の業界関係者からも、自律制御システム研究所の株価が、上場後の初値をピークに、低迷し続ける「初値天井」や「上場ゴール」を危ぶむ声が上がる。同社の株価がスポンサーの出口戦略(イグジット)に直結するという現実的な問題が横たわるからだ。

ある農業向けドローンメーカーの関係者は「ここ数年、業界各社がこぞってベンチャーキャピタルから資金を調達した。しかし、市場は思ったほど伸びておらず、評価も天井を打ったように感じる。ベンチャーキャピタルの利益確定のために、今後は株式市場へ押し出されるドローンメーカーが続出するのでは」と嘆く。

さらに過去には、DJIが消費者用ドローン市場でフランスのパロット社とアメリカの3Dロボティクスという大手2社を淘汰したという経緯もある。そもそも、消費者市場はこの3社が「3強」と言われてシェアを分けてきた。

しかし、DJIは圧倒的な資金力と人員数を背景に毎年新機種を投入し、競合2社はリストラや商用ドローン事業への移行、3Dロボティクスに至ってはソフトウェア開発会社への大転換を強いられた。

自律制御システム研究所は、消費者用ドローンのような機体を売るだけのビジネスと、導入コンサルティングまでを含む商用ドローンで市場が異なることを強調する。DJIも商用ドローンに乗り出すとは言っておらず、関係者も「われわれのドローンはあくまで空飛ぶカメラと思ってもらえれば」と語っていた。

にもかかわらずDJIは近年、次々と商用ドローンを市場に投入してきた。導入コンサルティングに関しても、すでに国内ではセキドをはじめとするDJI公認の代理店が担っている。こうした現状を踏まえれば、自律制御システム研究所がDJIとぶつかり合う可能性は高いといえそうだ。

これまで、自律制御システム研究所について業界内では「よくも悪くも、野波教授が好きに研究をするための場所」と指摘する声が少なくなかった。その野波氏は、2016年ごろから大手コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニー出身者の太田裕朗氏に社長を譲り、上場に向けて着々と準備を進めてきた。

今回、自律制御システム研究所が先陣を切って上場したことは、後に続く企業の評判をも左右する。とはいえ、業績に限れば株式を公開し、市場から資本を調達したり、リスクを一般投資家に転嫁するには早すぎる状況ともいえる。

株価を“墜落”させず、うまく離陸させることができるのか。初値の動きに、業界は固唾をのんで見守っている。

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