ドローン専業メーカー、「赤字上場」の勝算

自律制御システム研究所が上場で目指すもの

日本の商用ドローンメーカーは、消費者向けの娯楽用には手をつけてこなかった。そのため、DJIと同水準のフライトコントローラーを製造するために必要な飛行履歴を積み重ねるのは難しい。結果、創業からDJI製のフライトコントローラーに依存する企業も少なくない。

一方、自律制御システム研究所は、長年ドローン研究を続けてきた野波氏の知見に加え、創業当初から内製化を前提に研究してきたことが実り、完全内製化に成功している。

もう1つが、「自律飛行」の技術だ。フライトコントローラーはGPS情報を処理することで飛行位置を把握している。しかし、高いビル・山に囲まれている地点や屋内ではGPS情報が取得できないため、飛行の安定性が落ちてしまう。

自律制御システム研究所の場合、こうしたエリアでも飛行を続けられるように、カメラに映った画像から周囲の状況を把握し、ドローンが自機の位置を推定することができる、自律飛行機能を搭載している。

市場規模はまだ60億円

市場調査会社IDC Japanによれば、日本の商用ドローンの市場規模は2017年度で60億円程度。今後は橋梁の老朽化による点検や物流業の人手不足、自然災害時の救助業務など活躍する余地が広がり、2022年度まで年率約50%で成長すると予測している。

自律制御システム研究所は、スポット需要がメインの測量や空撮ではなく、点検や物流・郵便、防災といった定常的なドローン活用が前提となる分野に重点を置く。

さらに、機体の販売代理店に導入コンサルティングやアフターサービスを任せず、一気通貫のサービスとして提供するため、恒久的な収益源ともなる。太田裕朗社長も「機体販売だけでなくサービス提供もするため、安定した収益性を確保できるビジネスモデルだ」と胸を張る。

こうした高い技術力を誇る自律制御システム研究所だが、2018年3月期は売上高3.7億円に対し、営業損失5.4億円と、2013年の創業以来、通期の決算ベースでは1度も黒字化を果たしていない。今2019年3月期も売上高8.0億円、営業損失3.0億円と赤字が続く見通しだ。

自律制御システム研究所は近年、研究開発の加速だけでなく事業拡大に向けた営業態勢や内部管理態勢の強化を掲げ、費用がかさんできた。しかし、市場拡大のペースは見通しにくく「今のところ黒字化の具体的な時期についてコメントはできない」(早川CFO)としている。

自律制御システム研究所の上場には、ドローン業界も注視している。ある業界関係者は自律制御システム研究所の成否を「すべては日本郵便(の動向)次第」とみる。

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