日本人が山ほど残業を強いられる2つの根因 底なし残業なしに成立しない日本人の働き方
全体平均の残業は減ったがフルタイム従業員は高止まり
1980年代後半からは、国際的な批判の対象となったこともあり、日本全体の平均労働時間は徐々に減少してきました。1990年代、バブル崩壊後の日本企業では、雇用している従業員に大きな変動が起こります。
この時期、日本企業は長引く不況を背景に、低賃金で育成コストのかからない、アルバイト・パートという雇用形態を拡充していきました。そこに、不況によって夫だけの収入では家計が苦しくなってきた主婦や、新しく生まれてきたカテゴリであるフリーターといった労働者が参入します。
この人たちの多くは時給制賃金で、労働時間の短いシフト制などで働いているので、1人あたりの労働時間は少なくなり、「全体平均」を押し下げていったのです。一方で、「フルタイム」の雇用者の平均残業時間は長期的にほぼ同水準で高止まりし、ほとんど変わっていません。
他の分析(※)でも、日本の労働時間は1980年代後期の「時短」運動を経ても変わっていないことが統計的に示されています。
黒田祥子「日本人の労働時間 時短政策導入前とその20年後の比較を中心に」RIETI PolicyDiscussion Paper Series 10-P-002、2010年
つまり、1990年代から現在にかけて起きた労働時間の変化は、「働き方の全体的変化」ではなく、「長く働く人(=正社員)」と「短く働く人(=パートタイム労働者)」の「二極化」現象であると解釈できます。
両者の平均をとっているので、表面上は減ったように見えるのです。この間、日本以外のほとんどの先進国は、さまざまな規制や施策によって労働時間を減らしてきました。