日本人が山ほど残業を強いられる2つの根因 底なし残業なしに成立しない日本人の働き方

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それでは、なぜ日本においては労働時間短縮施策の効果もなく、また、オートメーション化やインターネットなどの革新的技術の普及にもかかわらず、残業習慣がこれほど長く続いてきたのでしょうか。背景には、日本の職場特有の「2つの無限」があるように思います。

1つ目は「時間の無限性」です。その原因は「法規制の実効性の乏しさ」にあります。先ほども述べたように、労働基準法において法定労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、第36条により、協定を結びさえすれば、法定時間外労働と休日労働は認められます。

しかも、繁忙期などには「特別条項付の36協定届」を届ければ、残業時間の基準を超えて働かせられるため、実質、青天井で残業ができる仕組みとなっています。

つまり、規制はありつつも、その規制をすっかり「骨抜き」にする条項がしっかりとセットになっているのです。

時間を有限とする必要がある

ヨーロッパでは、国によって基準となる時間は異なるものの、「規制の骨抜き」はできません。企業の超過残業は法的ペナルティが科されます。

日本でも、2018年に成立した「働き方改革法」により特別条項での残業時間の上限が定められたので、今後、青天井は許されませんが、月の上限は最大100時間というかなり高い水準で決着したことと、実際には労使協定を結んでいない企業も多く、実効性があるかはまだ不透明な現状があるため、今後の推移を見守る必要があります。

残業を減らすには「時間」を「有限」とする必要があることを、少し頭の片隅に入れておいてください。就業時間がどこまでかという「境界」がなければ、人は働き続けてしまうのです。

2つ目は「仕事の無限性」です。日本の職場は「どこまでが誰の仕事か」という区切りがつけにくいことで知られています。

専門用語では「仕事の相互依存性」と言います。お互いの仕事がオーバーラップ(重なりあうこと)していて、「ここからここまでがAさん」「ここからここまでがBさん」という具合に明瞭に分けられないのです。職場でごちゃっと仕事を抱え、仕事の責任範囲が不明瞭な傾向があります。

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