電通がクラウドワークスに出資したワケ 大企業のcrowd活用が本格化

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吉田社長

渋谷のオフィスで取材に応じた吉田社長は、単なる資金調達という側面を超えて、「電通が加わったのは大きいこと。日本においてクラウドソーシングがいよいよ立ち上がってきたと感じる」と興奮ぎみに語った。経営陣に大企業出身者が多く、業界内では比較的大企業からの仕事依頼が多いクラウドワークスだが、「大企業の個人への発注はまだまだ敷居が高い」(吉田社長)のが実情。その中での電通系投資ファンドの出資は、クラウドソーシングが大企業で一般的に活用されるようになる時代が来る前触れといえるかもしれない。

電通自身もクラウドソーシングの活用を目指している。「デジタル広告や販促などの領域でクラウドソーシングの活用をトライアル的に進めていく」(電通デジタル・ホールディングス)予定だ。

クラウドソーシングは企業にとって、通常の採用ならば数カ月以上かかってしまう人材発掘、採用というプロセスを最短15分程度にまで大幅に短縮することができるというメリットを持つ。

加えて、従来なら発注先から期待どおりの品質の成果物が得られるかわからないというリスクがあったが、クラウドソーシングなら小規模案件で前もってスキルを確認し、柔軟な発注をすることができる。こうした利点が認識され、大企業をはじめ省庁、地方自治体などでもクラウドソーシングの活用が広まりつつある。

感謝の気持ちを伝えるボタン

吉田社長は「時間と場所にとらわれない働き方自体は何年かしたら当たり前になる。私たちが重視するのは、自由な働き方という手段を通じたユーザー体験で人々を笑顔にすること」と話す。その思いはクラウドワークスのサービスの端々に表れている。中でもユニークなのは「ありがとうボタン」だ。発注者から受注者向けに、フェイスブックの「いいね!」ボタンと同じように使い、感謝の気持ちを伝えるものだ。依頼した仕事をうまく仕上げてくれたとき、せっかく応募してくれたが断るときなどに使う。

「ありがとうボタン」で受発注者間の「コミュニケーション」を可能にしたり、業界で初めて会員向けの福利厚生を始めたりするなど、斬新な価値を提供し続けてきたクラウドワークス。今回の資金調達を受けた諸施策で、クラウドソーシング業界に再び新しい風を吹き込んでくれるに違いない。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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