城彰二が提言「森保ジャパン」が強くなる方法 W杯後の日本代表に必要な個と組織力の強化

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大迫は自分と同じ鹿児島育ちで、育成年代の頃からもともと群を抜いてうまかったけど、ボールキープ力はそこまでじゃなかった。海外に行ってから体の使い方が本当にうまくなった。やはり環境が影響する部分も大きいと思います」

神妙な面持ちでこう語る彼自身も、解説者業の傍らで「インテルアカデミージャパン」スポーツディレクターとして少年を指導している。「子どもを教えるのは本当に難しい」と感じる日々だが、「いずれは世界に通じるFWを育てたい」と夢を持ち、個の力を高めるアプローチを強く意識しているという。

その一方で、北海道サッカーリーグに所属する「北海道十勝スカイアース」のスーパーバイザーとしてクラブ運営や組織作りにも携わっている。このように多彩な角度からサッカー界を学び、自分なりの形で支えていくというのが、今の城彰二のスタンスだと言っていい。

個と組織力を兼ね備えたチームを見せてほしい

「日本代表OBとして要望があるとすれば、個と組織力を併せ持った本当に強い日本代表をぜひ見せてほしいということ。森保ジャパンのここまで5戦は親善試合で攻撃面がすごく重視されましたけど、世界に出ればボールポゼッション率は相手のほうが上回る。ロシアのベルギー戦(ロストフ)にしても、2点を取ったのに押し込まれ、守り切れなかった。

城 彰二(じょう・しょうじ)/元サッカー日本代表FW、現サッカー解説者。1994年、Jリーグの現ジェフユナイテッド市原・千葉入団。1996年にはアトランタ五輪代表、1997年日本A代表メンバーとしてW杯悲願の初出場に貢献。1998年エースストライカーとしてフランスW杯に出場。現在はサッカー解説者として活躍する傍らサッカー普及活動にも注力(撮影:梅谷秀司)

それを回避できる部分はたくさんあったと思うし、逆転されてしまうのが日本の弱さ、個の能力の低さだとも感じます。

逆にアジアへ行けば引かれた相手をどう崩すかという難問に直面する。そういった状況に対応しながら確実に勝てる強い代表が見られれば、本当に嬉しい。

僕ら元サッカー選手やメディア、関係者もいろんな部分からバックアップしていく必要があると思います」

1998年フランスワールドカップで世界への扉をこじ開けた名FWは、非凡な才能を備えた後輩たちに未来を託し、自らもサッカーへの恩返しを続けていく。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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