エントリーシートを書くことは学生の大きな負荷になっている。そこで「項目が多い」ことや「文字数」が良くも悪くも印象に残る。三井住友海上火災保険に対しては「受けた企業の中でいちばん書く項目が多く、どんな人物か見極められていると感じた」(文系、上位国公立大)という学生がおり、非常に項目数が多そうだ。
忙しい就活生は、コピペで効率化を図ろうとする。エントリーシートを新たに書く手間を減らすためだ。しかし、人事は経験豊富。そんなことはお見通しで、設問を工夫する。
「他のESを使い回せないようなものが多い」(文系、上位私立大)と学生は嘆くが、たぶん人事の意図は「質問数が多めで、主体性が求められている気がした」(文系、上位私立大)とあるように、学生自身の主体性を見ることにあるのだろう。
実際のエントリーシートを見ると、設問がひねってある。
「あなたが異なる価値観に影響を受けた経験を教えてください」という設問は、「異なる価値観」という表現について少し考えなくてはならないだろう。「あなたが自ら学び考え、行動した経験を教えてください」も、「自ら学び考え、行動した」と自分自身を問い直されると、戸惑うのだと思う。
花王も項目が多いようだ。理系学生からのコメントが目立つ。「質問が多い」(理系、旧帝大クラス)、「質問が個性的だった」(理系、旧帝大クラス)、「設問数が多かった」(理系、旧帝大クラス)。
シンプルさが印象的な伊藤忠商事
項目や文字数の多さだけでなく、少なさも印象が強い。その代表格が伊藤忠商事。「1つの項目が非常に短い」(文系、早慶大クラス)、「設問が短い。独特」(文系、旧帝大クラス)と評価されている。
確かに「あなたの強みは何ですか」、「あなたの弱みは何ですか」と、伊藤忠商事の設問は短い。しかも20文字以下で書けという注文だ。どう書けばしゃれた表現になるのか、きっと悩むだろう。
また、動画を要求していることも、強い印象を受けた理由になっている。「PR動画も送信する必要があったから」(理系、旧帝大クラス)、「動画選考があったから」(文系、上位私立大)。
設問のシンプルや動画。いずれも知的な印象がある。
旭化成は就職人気ランキングの常連だ。メーカーだが、理系だけでなく、文系からの人気も高い。「印象に残ったエントリーシート」という質問でも、文系学生15名、理系学生13名が旭化成を挙げている。
好意的なコメントが多い。「指定ワードを使った自由作文があった」(文系、上位私立大)、「詩を書く変わったES内容が印象に残っている」(文系、早慶大クラス)、「指定された単語を組み合わせて、自由に表現する設問があった」(文系、早慶大クラス)、「質問が面白く楽しく書けた」(理系、旧帝大クラス)と好評である。
もっとも、「変な設問」(理系、旧帝大クラス)という声も、中には混ざっている。実際の設問は、
お題は「科学・工・挑戦・融・市・ヴァーチャル・月・億・ハート」の9つである。
「科学」や「挑戦」はありふれているが、工・融・市・月・億などの漢字1文字をどう使うか? かなりむずかしい。センスが問われる。
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