(4)ターゲットの「Baby Daddy」事件
アメリカ大手ディスカウントストアにターゲットがある。問題となったのは、父の日のカードに「Baby Daddy」と刷り、さらに、黒人の夫婦がキスをしている画像だ。まずご覧いただくのであれば、「Target Baby Daddy」とでも検索いただければいい。
この「Baby Daddy」がわかりにくい。これは、グーグルでは「the father of one or more of a woman's children, especially one who is not her husband or current partner.」と訳されている。つまり、赤ちゃんの父親ではあるものの、夫や現在のパートナーではない立場の男性である。さらに繰り返すと、この父の日カードは、あえて黒人のカップルだった。通常ならば、なんらかの反応を引き起こすだろう。
そんな、ある意味、挑戦的な内容を父の日のカードにあえて書いたのは、ある意味、議論を惹起する目的があったのかもしれない……と思ったが、同社は批判を受けてただちに反応した。消費者から愛される店舗でなければならないとして、すぐさま大半の店舗からこのカードを取り除いたのだ。
しかし、それにしても、これが意図的で、「父の日」の定義や意義を考え直そう、という狙いがあったのだろうか。少なくとも、これを企画した段階では深い意図があったのだろうか。結果はSNSで拡散・炎上し、単なるお騒がせ案件となった。
世間の注目を浴びるために行われたある行為とは
(5)企業名すらもPRに使うことの是非
アメリカにIHOPというレストランがある。この略称はInternational House Of Pancakesからきている。つまりはパンケーキ屋さんだ。同社は、ハンバーガーを販売する戦略に切り替えることから、最後のPを逆さまにした、b、すなわちIHObとして企業名を切り替えることを発表した。
もちろんこのbはバーガーのbであった。この戦略に真っ先に反応したのがバーガーキングで、パンケーキ・キングに名称を変更してやるといった冗談を発表した。さらに、のちにバーガーキングは、自店舗でもパンケーキを販売するなどの対抗措置をとった。
面白いのが、IHOPで、この名称変更は、一時的に世間の注目を浴びるためだったと発表。あっけなく、IHObからIHOPにふたたび切り替えた。フェイクニュースという言葉があるが、これはフェイクチェンジとして、ネット上では多くのコメントがあった。単なるハンバーガーを宣伝する目的で、メディアまで巻き込んで、うその社名変更をするのは許せない、というわけだ。
これは悪フザケともいえるし、あるいは、批判覚悟のマーケティングだということもできるし、あるいは短期間でもファンを欺いていいのかと倫理的な問題にも広がっていった。
ここまで、2018年の、炎上案件を取り上げた。人種差別をもとにするものが2件、ロイヤルティーマーケティング1件、家族構成への配慮が1件、企業倫理が1件、という内容だった。
いまだに人種差別の案件が炎上のもととなっている。これは日本人が見ると、アメリカ人とは同じ感想を持てないかもしれない。しかし、それも含めて、世界的に話題になった、そして炎上した広告やCMを見ておくのは意味があるだろう。
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