(2)ハイネケンの人種差別内差別
2017年、アウディが中国で流した中古車のCMが大騒ぎになった。これは、結婚式場が舞台だ。愛の誓いをする2人に対して、なんと、新郎側の母親が舞台に駆け寄る。何をするかと思えば、花嫁の鼻をつまんだり、耳を乱暴に触ったり、身体検査をする。これ、つまり中古車であれば、納品直前にしっかりとチェックするだろう、だから花嫁が嫁ぐ際には身体検査は当然でしょう、という比喩のようだった。
比喩でも悪趣味なのは間違いがない。いまだに動画サイトで「audi china sexist ad」などと検索すれば出てくる。しかし、それにしてもすごいのは、鬼の姑くらい中古車も厳しくチェックしていますよ、というメッセージを発しているのは明らかで、撮影現場の誰も止めようとしなかったのだろうか。
次にハイネケンだ。バーテンダーがいて、そのバーテンダーは遠くに、女性を見つける。その女性に対して、ハイネケンの瓶をカウンター上に滑らせる。すると、その女性に届く、というものだ。これのどこが差別的か。可能であれば、この時点で見てほしい。検索時には「Heineken sometimes lighter is better」などと検索すれば出てくる。
問題となったのは、最後に「Lighter is better」(軽いほうがいいもんだ)と字幕が出る点にある。これは、もちろんハイネケンの飲みやすさを暗示している。と同時に、CMに出てくる出演者たちの肌の薄さと濃さをも表現している。ふたたび見てみると、バーテンダーが滑らせたビール瓶は、黒人たちの横を通り抜け、比較的、肌の黒色性の薄い女性のもとに届いている。そのうえで「Lighter is better」と流れる。
これは炎上したが、さてこれは、どう考えるべきか。見ている人間の感度も問われている。
自傷行為をあおるようなキャンペーンまで
(3)ロシア・ドミノ・ピザの悪趣味な募集
ロシアのドミノ・ピザでは、なんと、企業ロゴを入れ墨にしてSNSに投稿してくれた場合、100年分の無料ピザを提供すると、投稿者を募集した。インスタグラムで、ぜひ見てみよう。ハッシュタグは、「#доминоснавсегда」であり、ピザの無料を意味する(「ドミノが永遠に!」)。
これはいわゆるロイヤルティーマーケティングというもので、自社商品に忠誠心を持ってくれている消費者に対して便益を与えるものだ。この案件では、100年分のピザを与えるということだが、そのキャンペーン自体の宣伝効果によって広く人々に訴求する。また、100年分のピザに当選した人たちも、来店頻度や注文頻度があがれば、そのほかの商品も消費するようになるだろう。
自傷行為そのものをキャンペーンに使っていいのか、という問題。そして、ロイヤルティーを入れ墨で象徴していいのかという問題。そもそも、100年分の保証はどのように行うのか。実際の入れ墨の証明はどのように行うのか、といった疑問が噴出した。
キャンペーン自体は、応募が殺到して早々に中止となった。それにしても、入れ墨で応募を募る側も、嬉々として応募する側も、どうかしていると私は思う。
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