「CM炎上取り下げ」多発のワケと過剰反応の罠

主張したいのなら批判かわせる覚悟と確信を

クレームや批判で「炎上」しては、放映や掲載を取り下げるケースが続いている(写真 : Kazuhiro Konta / PIXTA)

今度は、三ツ矢サイダーのCM取り下げだ。学校の屋上でトランペットを吹く女子の背後から友達が駆け寄って軽く接触する。4月15日からアサヒ飲料が放映していた「僕らの爽快編」。その情景描写に対して「金属の歌口がぶつかって唇をケガし、演奏できなくなるおそれがある」と指摘したトランペット奏者のツイートが拡散され、「危険だ」「私も歯を折った」と非難が続出。アサヒ飲料は同18日、お詫びとともにCM取り下げを決定した。

一方でこのCMを見て「それほどひどい内容か?」「クレームした側と企業側、双方の過剰反応じゃないのか?」と疑問視する声も少なくない。

近年、CMや広告など、ネットユーザーの間で「これはおかしい」「不適切だ」などとクレームや批判で「炎上」しては、放映や掲載を取り下げるケースが続いている。

CMではないにせよ、その最たるものが大もめにもめた東京オリンピックのエンブレム問題や、新国立競技場の設計案だったように思う。そういった創作や決め事に対して、匿名に隠れた素人もプロも玉石混交で正体の見えにくいネットが物言いをつけ、挙げ句一過性の祭りに近い騒ぎとなって炎上取り下げに発展する一連の動きの「慣習化」、ちょっと行きすぎなムードも感じる。

「ネット正義」の根拠が変遷していく

元をたどれば、ハウス食品のCMで流れた「私作る人、僕食べる人」とのセリフが「性差別的だ」との反発を受けて放映中止になった1975年から、確かに日本の視聴者は自分たちの意見を世論化する力を得てきた。だが、現代の炎上はイデオロギーや社会観論争のような重さを失いつつあるような「言いがかり」に近いレベルのものも見られ、かつての論争とは趣を異にしている。

Twitterを代表格とする匿名SNSの利用層が広がった2012年くらいから、近年の炎上取り下げの系譜は続いている。初期は、味の素のイメージ広告や花王の洗濯洗剤など、日用的な消費財のCMが料理をする人や洗濯をする人を女性に限定してCM制作をしているという、固定したジェンダー観に疑問を呈するような「表現」をめぐってネットで炎上。それに気づいた企業が対応するという流れだった。

そのネット炎上の目的が変質したのが2年ほど前。2015年3月に放送されたルミネCMの情景描写が「女性蔑視」だと炎上した後ぐらいだろう。同5月にエンブレムの「パクリ」疑惑浮上、8月に新国立競技場案のザハ案撤回をめぐってネットで大炎上した。

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