「CM炎上取り下げ」多発のワケと過剰反応の罠

主張したいのなら批判かわせる覚悟と確信を

議論よりも「取り下げ」や「お詫び」を最終的な目的とした、強者を屈服させる一種の炎上中毒。ネットで検索すれば詳細は出てくるからいちいち概要を書かないが、AGFのBlendyネット限定CM、ルミネ、資生堂インテグレート、東急電鉄のマナー広告、日清カップヌードル、エネオスでんきなど、「炎上ロス」とも言うべき燃え尽き感を払拭するかのような次の対象探しが続くにしたがって、「まだやっているのか」と逆に炎上騒ぎを疑問視する声が上がっているのが実情である。

私も連載コラムなどで何かとジェンダー関連の炎上案件を論じたり、自分のコラム自体が炎上したりという物書き生活を16年ほど続けているが、最近のネット炎上のイージーさには辟易する。一連の炎上騒ぎも、初期はCMにおけるジェンダー観の指摘に意義があったと思うものの、最近はとうとうジェンダーのネタが尽きて「危ない」が根拠になっていたりするのを見ると、ネット正義を振りかざす根拠の陳腐化を感じる。

それにあっさり白旗をあげてお詫びし取り下げる企業に対しても、「じゃあ、なんでそんな程度の広告を打つのか?」との思いが拭えない。なぜそんな「いまだに視聴者に突っ込まれるすきのある」制作と「炎上したら大慌てで取り下げに甘んじる」姿勢を続けるのだろうか。

そこには、広告主である大企業の内部事情や、広告代理店などの制作サイドとの体質・思惑の違いが理由となって潜んでいる。

炎上には即刻対応!業界が恐れているのは◯◯への波及

広告・広報業界の現状について、PRコンサルタントの宮﨑晴美さんは「広報業界がネットの反応に敏感であるのは事実です」と説明する。広告をトータルでプロデュースし、制作し納品する側である広告代理店には炎上対応という業務がある。品質保証の一環として炎上を鎮火させる(あるいはその延長で、ネットを利用して広告効果を上げる)のだ。代理店だけでなくPR会社でも炎上対応案件の請負件数が多く、それに忙殺される社員もいる。

広告業界の傾向として、ネット炎上に関してはSNS→まとめサイト→ネットメディア→テレビの流れを恐れて、早めに削除するという流れがあるようだ。ポリシーは各社あるはずながら、やはり感覚に頼る部分が大きく、最終的には誰も責任を取らない大企業の右にならえ傾向の影響が大きいとみられる。

SNSの意見にも無視できないものはもちろんある。「社会に対する影響・企業姿勢、企業として注力していたり大切にしていたりすることに反しているものは、そもそも出すべきではないし、クレームがあれば即刻対応すべきで、その対応が遅れすぎたのがDeNAだと思う」と宮﨑さんは指摘したうえで、「私が広報担当者でも、(「25歳からは女の子じゃない」のキャッチコピーで炎上した)資生堂のCMは削除したような気がします。女性を支援する企業が女性の敵をつくるのは違うなと感じるからです」と語る。当然と言えば当然だが、広告に大枚をはたく企業として、最も恐れるのは企業イメージが傷を負うことなのだ。

次ページ広報部が過剰反応する、「社内事情」とは
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