AIが予測、100年後の「絶品料理」はどんな味か 「世界一美味しくない」といわれる食材を使用
松嶋:そういえば、この間ニューヨークへ行って衝撃を受けたんです。バーで牡蠣を頼んだら、レモンのほかに、ケチャップと西洋わさびとタバスコが出てきました。「何だこの組み合わせは?」って。
「こんなものを食べているから、アメリカ人は味覚が悪くなるんだろうな」って思いながら食べていると、そのうち口が麻痺していくんです。舌がバカになるというか。そうなると、人はお腹がいっぱいにならないと満足できないんです。それが、肥満の原因なのではないかと思いました。
コロンブス以来の発見
牡蠣というのは本来、味蕾(みらい)を作ると言われています。舌の上にあるレセプター(編註:味覚を感じる受容体)を、牡蠣が持っている亜鉛が作ってくれるので、牡蠣を食べると味覚がよくなると言われているんです。
石川:確かシェフは、時々味覚を治すために牡蠣を食べるんですよね。
松嶋:はい。にもかかわらず、タバスコなんかをかけるわけです(笑)。「すごいなぁ、アメリカは」って。基本的にアメリカは刺激を受けることに幸福を感じている国で、その価値観の延長線上に、そうした味付けがあるのだなと。
で、その時ふと思ったんです。唐辛子って、英語ではチリペッパーとかホットペッパーというわけで、そうか、コロンブスは唐辛子を、当時は高価で貴重だったペッパー(胡椒)としてヨーロッパへ持ち帰ったんだなと。
そうやって間違った認識で世界に広がったから、世界の人たちは「スパイシー」イコール「辛い」になり、「辛くておいしい」につながったのではないかと。そして、辛さで口内が麻痺したままいろいろなものを食べるから、過剰摂取が生まれているのでは……ということに気が付きました。これ、世紀の大発見だと思います。
石川:コロンブス以来の(笑)。
松嶋:そう(笑)。コロンブスが犯したミスを、僕が再発見したわけです。そういう背景もあって、今日は牡蠣を用意したわけですが、何が言いたかったかというと、「コロンブスは世界中をごちゃ混ぜにしたんだな」ということです。で、まあそれも「和」かなと。
石川:おもしろいですね!
松嶋:レシピを作る時は普通、「この食材の原産地はどこだろうと」考えていくわけですが、今回の食材には何の共通性もないんです。でも、共通性がないということが逆にいいのかなと、今回は考えました。