何をしても「自分を卑下してしまう人」の盲点 「ありのままの自分」では社会に適応できない
もちろんこれは、「自分に自信が持てない人」にとっては、苦しいステップです。しかし、どれほどダメな自分であっても、まずはそのまま、受け入れてみる。そうすることで「本当の自信」を手にするための2つの道が開かれることになります。
持って生まれた資質を「そのまま」活かす
「本当の自信」を手にするための道のひとつは、「持って生まれた自分」をできる限りそのままに、社会の中で生かしていくことです。
「え? 自分にもともと備わっている資質なんて言われても、自分には人に誇れるような才能なんて何もありません……」
そうおっしゃる気持ちはよくわかります。
でも、「もともと備わっている資質」というのは、必ずしも「すごい能力」とか、「役に立つスキル」である必要はないんです。
僕の恩師でありカウンセリングの師匠である方があるとき、「自分には”意地悪”という才能がある」ということを言ったことがあります。「自分ほど、根っからの意地悪な人間はいない。でもだからこそ、人の短所を見抜き、その人が失敗をしでかしそうな場面を予測して助言することができるんだよ」というのです。
このお話をお聞きしたときは、正直なところ、冗談をおっしゃっているのだろう、と思っていました。でも、年月を重ねて自分なりにカウンセラーとしての経験を積んでから振り返ってみると、これはある意味、本気でおっしゃっていたんじゃないかと思うようになりました。
多くの人は、才能とか能力といったものを「最初から光り輝いている何か」として捉えています。しかし、才能や能力の本質というのは、社会や、周囲の人との関係性の中で「もともと持っていた資質」が生かされることによって、初めて輝きを持つものなのです。
師匠の例で言えば”意地悪”という持って生まれた資質を、そのまま相手を攻撃したり陥れるような形で使ってしまったら、害にしかならなかったでしょう。とても、社会に貢献するどころではありません。
ところが、同じ資質を、「相手の問題点を鋭く見抜き、そこをいかにサポートしていくか」という観点で使えるようになれば、それはほかの人に真似できない「カウンセラーの才能」になるのです。
「才能がない」「能力がない」「だから自信が持てない」と多くの人が口にします。でも、どんな人にだって能力はあるし、才能はあるんです。なぜなら、人間は社会の中で生きる動物だからです。どんな資質も、「どこで」「いかに」使うかによって、花開き、輝く場合もあれば、問題を引き起こす要因になってしまうこともある。これは安っぽいヒューマニズムの標語とは別次元の、厳粛な事実です。
いつも納期に仕事を間に合わせることができずに「自分は仕事が遅い」と悩んでいるあなたは、実は自分のペースで忍耐強く物事に取り組むことで成果を出せる、研究者タイプの人材なのかもしれません。あるいは、飽きっぽくて1つのことに集中できない人は、もしかすると、誰も思いもしなかった新しい事業を開拓していく、起業家精神にあふれた人なのかもしれません。
私たちは皆、何らかの資質を持って生まれてきます。一見、どれほど役立たずで、無意味な資質に見えたとしても、それを一度、「ありのままの形」で見据える時間が必要なのです。そうすればその資質を社会のなかで「いかに使うか」という道も見えてくる可能性が高いのです。