決断遅い日本が、ミャンマーで巻き返すには? ミャンマー若手起業家、 チョーミンティン氏に聞く

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――しかし、急速な経済発展は、一方で国内に歪みをもたらすことにもなりませんか。

そうですね。これだけ経済発展のスピードが速まると、どうしても歪みは生じてきます。とにかく、何の規制もなく、計画もなく開発を優先しているものですから、至るところで弊害が生じているのです。たとえば不動産価格の高騰などは典型的です。都心部の地価は、この1年半で2~5倍に跳ね上がりました。

交通渋滞も深刻です。なぜ、急に渋滞がひどくなったのか。道路などのインフラ整備が間に合っていないのに、海外からの中古車輸入を解禁したからです。どんどん中古車が輸入され、それが道路を走る。当然渋滞が起きます。少なくとも道路などの交通インフラが整備されるまでは、地域ごとに自動車の輸入制限をかけるべきだと私は思います。

そしてもうひとつは、これが非常に重要なのですが、人材の問題です。人材の育成に時間がかかる反面、経済が急速に発展したため、経済発展のスピードにキャッチアップできるだけの人がいないのです。

日本企業は、人材育成でミャンマーに食い込め

――今、日本企業がミャンマー経済のために協力できることがあるとしたら、何を望みますか。

ミャンマー人の人材育成に協力してもらいたいと思います。ミャンマーでミャンマー人を雇用して教育する。人件費として3000万円もあれば、100人以上のミャンマー人を雇用しつつ、人材を育成できます。それが草の根で、日本経済とミャンマー経済の絆を強めることにもつなるのではないでしょうか。「日本の会社は給料を払ってくれて、勉強までさせてくれた」となれば、日本企業はミャンマー人から感謝されるはずです。

特に製造業は、草の根まで経済効果が波及するし、GDPを長く押し上げる効果があります。それはわかっているのですが、優秀な工員がミャンマーではまだ育っていません。

その理由はミャンマーが恵まれているからでしょうか。地下資源が豊富ですし、肥沃な大地で農耕も盛んに行われています。そこに甘えている国民が多く、一所懸命に働かない傾向も見られるのです。

だからこそ、人材教育をしっかり行い、一人あたりの生産性を引き上げていく必要があります。ミャンマーは今、経済が発展段階にあるので、それこそ、自動車整備、タクシー業務、観光業務、ネイルサロンまで、何でも必要とされます。

大きなプロジェクト案件を巡って競い合うのはもっぱら大企業ですが、今のミャンマー経済は、たとえ中小企業でも現地にしっかりしたビジネスパートナーを見つけることができれば、進出して成功できる可能性があります。日本の中小ベンチャー企業にとっては、ビジネスチャンスが広がっているのではないでしょうか。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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