シャープ、テレビ「爆安販売」で直面した誤算 中国でブランド価値低下、戦略転換迫られる
この“投げ売り”のような販促の結果、2017年度にはシャープから富連網への販売額が585億円(前期比35%増)と急成長。300万人を超える会員IDも手に入れた。
鴻海グループ従業員の家族や知人、自社社員寮を含めた大規模集合住宅やホテルへの積極営業など、まさしく人海戦術による販売も効いた。これだけ格安販売をしてもシャープが大赤字になるどころか、利益を上げられたのは、富連網が在庫管理を引き受け、値引きコストを負担していたからだ。
鴻海がコストを切り詰め始めた
だが、ここに来て鴻海側の姿勢に変化が生じた。2017年度の純利益は約1387億台湾ドル(約5086億円)で、前期比約7%減少。今年に入ってからは、収益柱であるiPhoneの製造受託事業の下振れや米中貿易摩擦などの影響で、大幅な経費削減に踏み切るとの報道もある。天虎計画もその対象だとみられる。
電機業界に詳しいみずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「鴻海精密工業の業績が伸び悩む理由の1つには、天虎計画への支援負担も含まれるだろう。鴻海グループ全体では累積1000億円を超える損失が出ている可能性もある」と推測する。
さらに、格安販売を続けたことによるブランドの毀損も深刻だ。戴社長が従業員向けに10月30日付で出したメッセージにはこう書かれていた。「足元では(中国テレビの)この価格重視の事業展開が想定を超える事業イメージの低下を招き、結果的に白物家電事業をはじめとしたさまざまな事業を本格展開するうえで、大きなハードルとなっていることも事実です」。
実際、消費者からは「シャープは日本メーカーなので高品質というイメージはあるが、少しお金を持っている中産階級は、ソニーや松下(パナソニックのこと)のテレビを選ぶだろう」(中国・武漢市在住の20代男性)という声も聞こえる。
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