上に立つ者が胸に刻むべき「16文字」の漢字

実績や報酬は国民や社員の汗の賜物である

国指定史跡「旧二本松藩戒石銘碑」拓本(写真提供:二本松市教育委員会)
2018年は、政界、財界、官界、スポーツ界のトップの不祥事が相次いで起こった。過去の華々しい活躍とは裏腹に、カリスマたちの悲惨な末路である。彼らはどこで間違ったのだろうか?
元中国大使、元伊藤忠社長の丹羽宇一郎氏は、「トップの実績や報酬は、社員の汗によって得られたものということを忘れたからだ」という。また、このことは国家にもいえるという。トップが自身の晩節を汚すだけでなく、会社や国家を崩壊させないために、必要なことは何か。近著『習近平の大問題』を上梓した丹羽氏に語ってもらった。

石に刻まれた戒めの16文字

福島県二本松市の二本松城址(霞ヶ城址)に「戒石銘(かいせきめい)碑」という石碑がある。二本松城は丹羽氏10万700石の居城だった。私と同姓ということもあり、縁あって当地を訪れたときに、この戒石銘碑の由来を知った。

花崗岩の石碑には、こう刻まれている。

爾俸爾禄 〔なんじの俸(ほう) なんじの禄(ろく)は〕
民膏民脂 〔民(たみ)の膏(こう) 民(たみ)の脂(し)なり〕
下民易虐 〔下民(かみん)は虐(しいた)げやすきも〕
上天難欺 〔上天(じょうてん)は欺(あざむ)きがたし〕

この4句16文字を「戒石銘」という。意味合いとしては、「お前が手にする富は、すべて民の汗によるものである。下々の民は権力で押さえ従わせることができても、天を欺くことはできない(だから身を慎み、民を大切にせよ)」ということになろう。

『丹羽宇一郎 習近平の大問題:不毛な議論は終わった。』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

私は新刊『習近平の大問題』(東洋経済新報社)の冒頭に、この4句16文字を掲げた。この「戒石銘」を新刊書の冒頭に掲げた理由は、もとより習近平ひとりに向かってのことではない。この句が、いま世界中の政・官・財界を問わず、すべての指導者、とりわけ話題の多い日本の有名大企業の一部のトップの方々に向かって投げかけられるべき戒めだからである。

「戒石銘」の原典は、965年に後蜀(ごしょく)の君主・孟昶(もうちょう)が作った24句96文字の「戒諭辞」だといわれる。983年、北宋(ほくそう)の君主・太宗(たいそう)がこの「戒諭辞」より4句16字を抜き出し「戒石銘」とした。

太宗はこれを官史に示し戒めとしたという。その後、南宋(なんそう)の君主・高宗(こうそう)が「戒石銘」を石に刻ませ州県に頒布した。中国では、この時代に広く各州県に「戒石銘碑」が建てられたとされている。

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