「GAFA」支配にモヤッとする人が知らない本質 つまるところ彼らの目指すのは金儲けなのだ

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騎士たちの罪は次の2つのタイプのペテンのどちらかに入る。1つ目は他の会社の知的財産を拝借――盗むという意味であることが多い――する行為。悪質なのはそれを本来とは別の目的に使って利益をあげ、稼いだところでその知的財産を保護する点だ。2つ目は他の誰かが築いた資産を使って、それを開発した人にはできないやり方で利益をあげることだ。(251ページより)

1つ目のペテンは、2つのことを示唆しているという。まずは、自分たちで革新的なアイデアを思いつかなくとも、未来の騎士になれる可能性があるということ。そして、自分たちに同じことを仕掛けようとする相手に対しては、弁護士を立てて対抗すれば被害者にはならないということ。

2つ目のペテンからわかるのは、「先行者利益」が必ずしも利益にはならないということだ。業界のパイオニアが、後ろから撃たれることは珍しくないが、四騎士こそが撃つ側だというわけである。

たとえばフェイスブックの前にはマイスペースがあったし、アップルの前には最初のPCを開発した企業がいた。グーグルの前には初期の検索エンジンがあり、アマゾンの前には最初のオンライン企業があった。

四騎士は、それら先行者の死骸をあさって情報を集め、間違いから学び、資産を買い上げ、顧客を奪って成長したということである。

映画『スティング』でポール・ニューマンのセリフにあったように、偉大なるペテン師とは、相手がだまされたことに気づかないようにするものだ。事実、映画ではカモが最後の瞬間まで大金をつかめると信じていた。(中略)
四騎士はどこも多かれ少なかれ犠牲者の目を欺いている。ブランド企業はフェイスブックのコミュニティに資金を投入して、あとになってそれが自分たちのものではないと気づく。販売者は新たな顧客を多数獲得できると信じてアマゾンに加わるが、あとになってアマゾン自体と競争していることに気づく。ゼロックスでさえ、スティーブ・ジョブズに同社の技術を教えるだけで、アップルという世界最先端のテック企業の分け前(10万株)にあずかれると考えた。これらの傷は自業自得と言える。(262〜263ページより)

超優秀な人間にとっては最高の時代

その結果が世界に利便性をもたらしているのであれば、そこに価値が生まれることは否定できない。しかしそうは言っても、四騎士によってもたらされた「心地よい生活」は、得体の知れない「居心地の悪さ」と表裏一体の関係をなしているような気もする。言い換えればそれは、四騎士に牛耳られた世界のバランスの悪さだ。

だがギャロウェイ氏は、その違和感の正体についても説得力のある持論を展開している。

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