「GAFA」支配にモヤッとする人が知らない本質 つまるところ彼らの目指すのは金儲けなのだ

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大まかに言ってしまうと、現在は超優秀な人間にとっては最高の時代だ。しかし平凡な人間にとっては最悪である。
これはデジタル技術によって生まれた勝者総取り経済の影響の1つである。あちこちに散らばっているビジネスの池とその周囲の土地が、グローバリゼーションという豪雨にさらされると、いくつかの池が合体して大きな湖になる。
悪いニュースは、捕食者が増えたことだ。よいニュースは、大きな湖に住む魚はすばらしい生活を送ることができるということだ。四騎士はそれを巨大な規模で実証している。(360ページより)

そのような市場では必然的に、トップレベルの製品の価値は急騰し、劣った製品の価値は下落するだろう。労働市場でも同じだ。超優秀な人間のためには、その能力を発揮できる優秀な企業が何千と用意されている。しかし、もしも十人並みなら、世界中の何百万人もの同レベルの求職者たちがライバルになり、賃金が下がることすら考えられるということだ。

デジタル技術の進歩と四騎士の優勢が生んだ歪み

そこでギャロウェイ氏は「個人が成功するために必要な内面的要素」として「心理的成熟」「好奇心」「当事者意識」「大学に行く」「ブランド」「友人」など、成功するために必要な多くのことを紹介している。

だが、超優秀な人間にしか門戸が開かれない状況下において、これらはアイロニーとして受け止めるべきものでもあるだろう。どうやっても、富が運のいい少数の人間に流れていくことは事実であるのだから。いわば、最大の問題点がそこにある。

それが、何百万人もの怒れる有権者が取り戻したがっているアメリカだ。彼らは世界貿易や移民を責めることが多いが、四騎士とその狂信的崇拝も責められてしかるべきだ。四騎士は巨額の富を、投資家と才能に満ちあふれたごく少数の労働者にもたらした。一方、その他の労働者の多くは取り残された(大衆はストリーミングビデオのコンテンツと強力なスマホでおとなしくさせておけると信じているのだ)。(410〜411ページより)
このかつてないほどの規模の人材と金融資本の集中は、どこに行き着くのだろうか。四騎士のミッションは何なのか。がんの撲滅か。貧困の根絶か。宇宙探検か。どれも違う。彼らの目指すもの、それはつまるところ金儲けなのだ。(413ページより)

こうした状況をギャロウェイ氏は、「デジタル技術の着実な進歩と四騎士の優勢、“イノベーター”階層はケタ違いの生活をするに値するという思い込みから生まれた歪み」だと表現する。

『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は、12万部のベストセラーとなっている(画像をクリックすると特設サイトにジャンプします)

もちろんそれは社会にとって危険なことだが、かといって、それが衰える兆候はまったくない。問題はそこだ。この状態が続けば、中産階級は空洞化し、それが社会のバランスをさらに崩すことになるのだから。

では、どうしたらいいのか?

それは誰にもわからないことで、ギャロウェイ氏も明確な答えを持っているわけではない。しかしそれでも、四騎士を理解することは絶対に必要だと強調してもいる。その「理解」こそが、デジタル時代の先行きを予測し、そのなかで経済的な安定を築いていくための力となるということである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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