翻訳者が語る「ハリポタ・ファンタビ」の魅力 松岡佑子氏が見続けた魔法ワールドの奥深さ

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――翻訳家の方にまで見せないというのは徹底していますね。

本のときは英語のタイトルだけは明かされていました。それ以外は表紙も明かされないし、内容もわからない。タイトルの意味さえ教えてもらえなかったです。「はい、これですよ」と来るのは、イギリスで発売になってから。翻訳作業はそれからです。第7巻が発売されたとき、私はドイツにいたのですが、そこで英語版を手に入れて、空港で荷物を受け取る間に必死で読みました。

今回の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』で、主人公・ニュート(エディ・レッドメイン)のトランクにどんな魔法動物が収まるのかも見どころだ
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Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R.

――松岡さんでさえもそういう状態なんですか。

いつだってそうでした。だから、ギリギリまで中身がわからないというのは、目新しいことではないんです。でもだから、早く見たいという期待感は普通の人よりも強いですね。なにしろ翻訳をしなきゃいけないので。

――新シリーズの映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年公開)はご覧になったときはどう思われましたか。

原作は書籍の物語でなく、初めからスクリプト(脚本)なんですよ。ローリングさんの映画脚本家デビューですから。そのスクリプトを見たのは、確か映画公開と同時くらいだったと思います。これもやっぱりギリギリまで見ることはできなかった(笑)。

ローリングさんの想像力は本当にすばらしい

――やはり同じタイミングなんですね。

映画は非常によくできていたと思います。彼女の想像力は本当にすばらしいと思いました。舞台としては「ハリー・ポッター」よりも前の時代で、場所もニューヨークなので、まったく違うものとして観ることができたんですけども、ハリーの世界につながるいろんな筋が見えてきて、懐かしかったですね。

まったく新しい世界といっても、実はこの本はすでにハリーの物語の中に登場していたんです。『Fantastic Beasts and Where to Find Them(幻の動物とその生息地)』という本が。著者はニュート・スキャマンダーで、ホグワーツの指定教科書として出ていたんです。それは物語ではなく動物図鑑みたいな形でした。それが生き生きとした映像になって、その著者が物語の主人公になるというのは、また世界が広がった感じがしましたね。「こういう人物だったのか」という感じで。

――それでは最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』について期待されている点はありますか。

今回は特報でも明らかなように、(ジョニー・デップ演じる)黒い魔法使い・グリンデルバルドがすいぶん大きな役割を果たしますよね。(ジュード・ロウ演じる)タンブルドアも主要な役割を果たしていると思います。

今回の2作目でどれくらいまで物語が展開するかわかりませんが、5作で完結するこのシリーズの中で、グリンデルバルドとタンブルドアの確執がどうなるのか、そしてその中に割って入るニュート・スキャマンダーが今回はどのように活躍するのか気になります。

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