(第21回)就活前調査でのテレビ局の人気ぶり

●学生が憧れる業界、テレビ局の採用は大きく変化している

 かつてマスコミ業界は、同じ業界の中で業界志望の学生や業界に憧れを抱く学生を採用していた。しかし、それでもマスコミが夢や正義を売る商売であった時代は、数多くの優秀な学生が集まり、満足度の高い採用ができていた。しかし、近年のマスコミ採用は従来のような考え方だけでは、満足のいく採用ができなくなってきているのだ。

 例えば、関西に本社を置く某準キー局では、母集団構成が関西地区8割、首都圏2割という比率であるのに対し、内定者の比率が関西地区2割、首都圏8割に逆転してしまうという現象が何年も続けて起こっている。
同局では関西のマスコミ志望層の質的低下に対して、東京で説明会を増やすなど、採用戦略を大きく転換。ガチンコ勝負では圧倒的に不利なキー局とバッティングを繰り返しながら優秀な人材の確保に努めている。かつては“関西”という名の釣り堀に竿を出せば、釣りたい魚が釣れたが、今は魚がいるところまでいかなくてはならないのだ。

 採りにいく採用をすれば、前述の局のように競合企業が大幅に変化する--しかも自社よりも採用力もブランド力も優位な企業に変化することが多い。もし、採りにいく採用を目指しているにもかかわらず、競合企業が強敵に変化しないのであれば、それは採りにいく採用戦略になっていない可能性が高いと考えた方が妥当だ。
 また、別の局では、「かつてはテレビ局以外では新聞社、電通や博報堂といった大手広告代理店と競合することが多かったが、近年、採りにいく採用をするようになってからは自動車などのメーカーや商社、ITや通信、コンサルなど多様な業界と競合が目立つ」ようになったという。
 筆者の知る限り、テレビ局の採用担当者は業界の将来に大きな危機感と問題意識を抱いている人が多い。電波広告による右肩上がりの成長は最早望むべくもなく、保護された国内産業としての限界や欠点も十分に理解されている。

 一方でテレビ局の危機は2位と3位にランクインした大手広告代理店の収益モデルをも揺るがしかねない。言うまでもなく両業界は互いに既得権益を守っていかなければwin & winにならない強固なビジネスモデルによって結ばれている。
 そのようなテレビ局と広告代理店による表彰台独占やキー局が軒並みランクインした“就活前の前半戦のランキング”は、テレビ局という知名度が高い高給企業への憧れという表面的な志望動機以外に「巨大な権力に護られた既得権益」への回帰現象という側面があると考えるのは筆者の穿った見方だろうか。しかし、華やかなイメージだけでは優秀な学生を繋ぎとめることができなくなっていることも事実。最近では国際的な仕事を志望し、テレビ局の内定を辞退、他業界に就職する学生も少なくないのだ。

 東大や京大のランキングを見れば、電通や博報堂の順位は高いが、テレビ局はフジテレビが辛うじてランクインしている程度。しかも、経営的に見ればフジテレビは直近の決算において民放キー局で唯一経費削減に成功している局である。業界の持つマイナスの要素を織り込んだ結果が東大や京大のランキングならば、やはり上位といわれる大学は憧れだけで会社は選ばないということなのだろうか。
 いずれにしろプロ野球に例えるならば、この結果はシーズン前のオープン戦の順位。本格的な就活に入れば、採用数の少ないマスコミの人気は例年通り徐々に後退していくことは確実だろう。この段階でのランキングは企業が一喜一憂するものではない。それでも腑に落ちないという採用担当者の方は、熱烈なアナウンサー志望の女性票がテレビ局に集中したのだろうとご理解願うことにしよう。
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採用プロドットコム株式会社
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
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