ーー大きな違いがあるわけですね。
古屋:ここからがポイントなのですが、僕がやりたいことは、ハノーファーとアメリカの研究の融合です。アメリカ式の“先手”はとても良いのですが、残念ながら音楽とのつながりがないのです。
いい姿勢やいい身体の使いかたを指導するので、ケガは予防できるのですが、その結果音がどう変わるのかということにつながっていかないのがアメリカの特徴です。さらに言えば、アメリカの教育はすごく進んでいますが、身体運動学の研究はされていません。身体教育ですね。なぜそれがいいのか、それによってどのように身体が変わるのかといった研究はなされていないのです。
どこがゴールかといえばそれは音楽です。どんな音色を出すか、どんな響きを出すか。そのあたりはヨーロッパのほうが進んでいます。というわけで、この表現においてはこの身体の使い方が必要ですという橋渡しをするのが僕の役目だと思っています。
表現の可能性はまだまだ残っている
――なるほど、その結果として何が待っているのでしょうか。
古屋:音楽における表現の可能性はまだまだ残っていると思うのです。そこを開拓したいという想いがあります。過去のすばらしいアーティストたちの演奏を聴くと、もうこれ以上の表現はできないのかなと思われがちです。たとえばホロヴィッツに勝てるピアニストはもう出てこないのでは、とかですね。
僕は出てくると思っています。それを邪魔しているものさえ取り除けば表現の世界に特化できる。それが進化して新しい音楽が出てくると信じているのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら