2018年9月24日に東京オペラシティコンサートホールで行われたバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の第129回定期演奏会は、BCJにとってもクラシックファンにとっても忘れがたい時間になったのではないだろうか。
モーツァルトの「レクイエム」を中心に据えたこの日の公演は、鈴木優人の首席指揮者就任記念という特別な意味合いを持つコンサートであり、28年の歴史を刻む世界屈指の古楽アンサンブルBCJにとっては、まさに次の時代の扉を開く公演であったに違いない。
当日のプログラムには、BCJ音楽監督鈴木雅明による「鈴木優人首席指揮者就任のお知らせ」という1頁が加えられ、そこには「今日のヨーロッパやアメリカには、バロック音楽を専門とする古楽器のオーケストラは多数存在しますが、多くの場合、創設者やリーダーの引退や逝去によって活動は消滅し、あるいは再編成されていく状況を目の当たりにする時、BCJにおいては、鈴木優人が指揮を担うことによって同じアンサンブルが継続し、その価値観が継承できるのは、望外の喜びと言わなければなりません」と記されている。これは、古楽界の未来を明るく照らす出来事だ。
ちなみに、今や世界的なブームとなっている“古楽”とは、ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750)などが活躍したバロック期など西洋における「古い音楽」を意味し、特に作曲家が活躍した当時のオリジナル楽器を使用する演奏を指して用いられる音楽用語だ。
“善は急げ”ということで、早速BCJ首席指揮者への就任まもない鈴木優人氏に話を伺う機会を得た。
就任記念コンサートの手応えは
――首席指揮者就任おめでとうございます。就任記念コンサートは大人気で、2カ月前にチケットが売り切れたということですが、手応えはいかがですか。
鈴木:ありがとうございます。会場がいっぱいになるというだけではなく、とても密度の濃いお客様が集まってくださったことがうれしかったですね。BCJの定期演奏会においてモーツァルトの交響曲を演奏するのも初めてでしたし、コンサートアリアも初めてです。
その意味でも価値のある時間だったと思います。あえて今更モーツァルト時代の楽器で演奏しているということを売り文句にしなくても、演奏がとても生き生きとしていることに気づいてもらえた、と充実感を感じています。
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