日本発の「古楽アンサンブル」が飛躍した理由 首席指揮者に就任した鈴木優人氏に聞く

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鈴木優人(すずき まさと)/指揮者・鍵盤奏者・作曲家。1981年オランダ生まれ。東京藝術大学作曲科および同大学院古楽科修了。ハーグ王立音楽院修士課程オルガン科を首席で、同音楽院即興演奏科を栄誉賞付きで日本人として初めて修了。アムステルダム音楽院チェンバロ科にも学ぶ。第18回ホテルオークラ音楽賞受賞。2018年9月よりバッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者に就任。音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスでは、オリジナル楽器でバロックから現代音楽まで意欲的なプログラムを展開する。指揮者としてこれまでにバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)、アンサンブル金沢、九州交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、広島交響楽団、横浜シンフォニエッタ、読売日本交響楽団等と共演(筆者撮影)

――首席指揮者就任についてはいかがでしょうか。

鈴木:BCJの定期演奏会は年に5回で、今まではその中の1回を指揮していたのですが、これからは2回になります。結果を残すという意味では今までと変わらないとも言えますが、自分にとって課される責任がより大きくなると受け止めています。しかし、これが5年前だったら“まだちょっと早い”“準備ができていない”と感じたかもしれません。受けるからには “長いスパンでBCJと一緒に演奏活動をしていく”というこちら側の意気込みもありますし、“親父(鈴木雅明氏)と一緒にやっていく”という覚悟も必要でした(笑)。

ここに至る5年間にはさまざまなことがありました。最近は特に演奏会ごとに成長させられていることを感じます。ステージと客席をつなぐコミュニケーションにはつねにワクワクさせられますし、その時間が楽しくて演奏活動をしているとも言えそうです。

変化といえば、強力なコントロール力を持つ人が周囲に増えたことでしょうか。これは単なる人脈という意味ではありません。たとえばBCJのコンサートマスター寺神戸亮さんと共演していて感じるのは、彼自身の演奏も楽器も深化してすごいことになっているなということ。熟してきているのですね。そういった方が周りに増えてきているのです。

音楽のみがコアだけれど、人間関係も大事

――先日のコンサートに、福川伸陽さん(NHK交響楽団首席ホルン奏者)や、清水真弓さん(南西ドイツ放送交響楽団首席トロンボーン奏者)が参加していたのもその流れでしょうか。

(写真:©K. Miura)

鈴木:彼らはまさにモダン・オ−ケストラのトップ・プレーヤーです。しかしオリジナル楽器やそのプレーヤーに対してもとてもオープンなマインドを持っていますし、組織の中で演奏することの苦味や難しさも体験してきている人です。そうなると彼らに頼まない理由はないのです。彼らも音楽を楽しむことを具体化できる人たちなので、一緒に仕事をするのがとても楽しいのです。

鈴木雅明も同じように優れた奏者を招いて一緒に演奏していますが、これは、すべての奏者がフリーランスというBCJの特徴ですね。フリーランスの集合体ですので、音楽のみがコアであると言えそうです。とは言いつつも、組織内の人間関係は大事です。その意味では、演奏がどんなにうまくても、和を乱すような人を招くことは難しいです。ただし、仲良しグループには絶対にならないという矜持があります。そのあたりは父も苦労をしながら貫いてきたことでしょうね。

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