――首席指揮者就任についてはいかがでしょうか。
鈴木:BCJの定期演奏会は年に5回で、今まではその中の1回を指揮していたのですが、これからは2回になります。結果を残すという意味では今までと変わらないとも言えますが、自分にとって課される責任がより大きくなると受け止めています。しかし、これが5年前だったら“まだちょっと早い”“準備ができていない”と感じたかもしれません。受けるからには “長いスパンでBCJと一緒に演奏活動をしていく”というこちら側の意気込みもありますし、“親父(鈴木雅明氏)と一緒にやっていく”という覚悟も必要でした(笑)。
ここに至る5年間にはさまざまなことがありました。最近は特に演奏会ごとに成長させられていることを感じます。ステージと客席をつなぐコミュニケーションにはつねにワクワクさせられますし、その時間が楽しくて演奏活動をしているとも言えそうです。
変化といえば、強力なコントロール力を持つ人が周囲に増えたことでしょうか。これは単なる人脈という意味ではありません。たとえばBCJのコンサートマスター寺神戸亮さんと共演していて感じるのは、彼自身の演奏も楽器も深化してすごいことになっているなということ。熟してきているのですね。そういった方が周りに増えてきているのです。
音楽のみがコアだけれど、人間関係も大事
――先日のコンサートに、福川伸陽さん(NHK交響楽団首席ホルン奏者)や、清水真弓さん(南西ドイツ放送交響楽団首席トロンボーン奏者)が参加していたのもその流れでしょうか。
鈴木:彼らはまさにモダン・オ−ケストラのトップ・プレーヤーです。しかしオリジナル楽器やそのプレーヤーに対してもとてもオープンなマインドを持っていますし、組織の中で演奏することの苦味や難しさも体験してきている人です。そうなると彼らに頼まない理由はないのです。彼らも音楽を楽しむことを具体化できる人たちなので、一緒に仕事をするのがとても楽しいのです。
鈴木雅明も同じように優れた奏者を招いて一緒に演奏していますが、これは、すべての奏者がフリーランスというBCJの特徴ですね。フリーランスの集合体ですので、音楽のみがコアであると言えそうです。とは言いつつも、組織内の人間関係は大事です。その意味では、演奏がどんなにうまくても、和を乱すような人を招くことは難しいです。ただし、仲良しグループには絶対にならないという矜持があります。そのあたりは父も苦労をしながら貫いてきたことでしょうね。
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