ピアノ演奏に残された「飛躍的な進化」の余地

「身体の使い方」が進化のカギを握っている

「音楽が脳や身体にもたらす良い影響」や、「ピアノを学び演奏することがもたらすメリット」をテーマに白熱したイベント(写真:スタインウェイジャパン)

正しいメソッドを作ることが重要

――“脳科学の力がピアニストのレベルを押し上げる”という理屈が理解できました。そのために今必要なこととはいったいなんでしょうか。

古屋:日本においては、各音楽大学に僕が考えているような研究室が1つあるだけでよいと思います。ところが新たなことを導入することへのハードルは高く、なかなか実現できないのです。日本の音楽家は才能も感性もとても豊かだと思いますが、身体の使い方を最適にする余地は残されていると思います。なので20代後半で故障して僕のところに相談に来るのです。

残念なことに才能のある人は往々にして故障するまで聞く耳を持ちません。自分たちは才能があるしコンクールで入賞もしている。何か問題ある?といった感じの上から目線も時折(笑)。

そういう人たちも20代後半になって身体の不調で僕のところに来るわけです。いい弾き方や練習の仕方を教えていたのに習慣化できなかったのです。良い練習習慣をつけさせるのは本当に難しい。弊害は悪い癖が強化されるだけの反復練習です。ダルビッシュ投手が“練習は正しくやらなければ簡単に裏切られる”と言っていますが、これはとても本質的なことで、音楽家にも当てはまります。

その意味では正しいメソッドを作ることも重要です。先生たちが正しいメソッドや教育プログラムを作ってライセンスし、音大などで採用してもらうことがファーストステップかなと思います。

最終的には、ショパン・コンクールの優勝者といったピアノのスーパースターを日本から輩出することが目標です。さらには、ジストニアのない日本も作りたい。そうすれば多くの人々がそれを体験するために日本にやって来るようになると思います。

僕が目指していることの1つが、科学と音楽は相いれないという考えを取り除きたいということです。科学は先にくるものではないと思います。目的が先にくるものです。それを助けるお手伝いなら科学はたくさんできるはずです。それってすごくすてきなことだと思いませんか?

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