ロシア人のアヴァンギャルドな世界観

ユートピアを求めた人々

目の前は一色海岸という絶好の立地で、海の景色と美術の両方を楽しめるのが神奈川県立近代美術館葉山館だ。2014年1月26日まで、ロシアの映画ポスターを中心にした展覧会、「ユートピアを求めて ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」が開催されている。

難しいことは抜きにして、デザインの移り変わりを見るだけでも楽しい。ロシア美術を専門とする、主任学芸員の籾山昌夫さんに案内していただいた。

ロシア人が夢見た、火星旅行

ニコライ・プルサコーフ&グリゴーリー・ボリーソフ《火星旅行》1926年、リトグラフ・紙 Ruki Matsumoto Collection Board

これは映画『火星旅行』のポスターだ。人間が火星に飛び出していく場面だろうか。右下の緑色の顔が、ただならぬ気配を感じさせる。カラフルなポスターだが、映画自体はモノクロだった。

展示室にはこうしたポスターが約180点並んでいる。どんな背景で制作されたものなのだろうか。

ロシアでは1917年に革命が起こり、ソビエトが誕生して社会主義国家がつくられた。社会の動きとともに、芸術家たちも過去の伝統から離れ、ユートピアを夢見て、社会を変革する力になろうと考えた。その中から生まれてきたのがロシア・アヴァンギャルドと呼ばれる前衛芸術運動だ。

アレクサンドル・ロトチェンコ、ステンベルク兄弟らは、国策映画のポスターを描くなど、社会を改革する活動に参加した。彼らの象徴的なデザインは、同心円と画面を斜めに走る線だった。

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