オバマの演説は「やりたい放題宣言」に等しい オリバー・ストーン単独インタビュー(下)
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「やりたい放題宣言」に等しいオバマの演説
大野:オバマ政権は今年9月、化学兵器使用をめぐって予定していたシリアへの軍事介入を中止する決断を下しました。これをどう評価しますか。
ストーン:大きな衝撃を受けました。ブッシュ前大統領だったら、必ず攻撃すると思ったからです。オバマは就任当時、ブッシュの「テロとの戦い」を変えようとする姿勢を見せましたが、実際にはむしろ攻撃する国のリストを大幅に増やし、対テロ戦争を発展させていきました。今回の攻撃中止は、その路線が行き詰まったことの証左だと思います。
現在のテロは、戦略に長けたトップをもつ小さな組織が行なう場合がほとんどです。つまり主体は「国」ではない。にもかかわらずアメリカはグローバルな戦争を展開しています。すべての国を「アメリカに従うか否か」でとらえ、アメリカの行動に反対した国は「敵」とみなす。いわば「グローバルな専制君主」として振る舞ったのです。
オバマは9月24日の国連総会で、「アメリカの核心的利益を守るためには、われわれはどの国にも介入する権利をもっている」と演説しましたが、私はこれを聞いて腰を抜かしました。アイゼンハワーの時代でさえ、他国に介入するときには美辞麗句を使って行動を正当化しました。オバマの演説は、「アメリカはやりたい放題をする」と宣言しているに等しい。あまりにも無礼で傲慢な態度です。アメリカは軍事的には強さをもっていますが、モラルの点では弱い。「腐っている」といってもいい。このような態度が一部の国を硬化させてしまったのは事実です。
アメリカの政治は軍事システムに強固に組み込まれています。共和党であれ、民主党であれ、この事実は変わりません。アメリカにリベラルな「緑の党」が育っていないことは、国民にとって非常に不幸だと思います。