オバマの演説は「やりたい放題宣言」に等しい オリバー・ストーン単独インタビュー(下)

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大野:シリアをめぐる一連の判断は、「超大国アメリカの終焉」につながるとの見方もありますが、いかがでしょうか。

ストーン:それはわかりません。中国やロシアの核兵器が「アメリカ独裁」を防いでいるものの、依然として軍事力の面でアメリカに立ち向かうにはほど遠い。アメリカはステルス駆逐艦で中国を攻撃することもできるし、宇宙から敵のミサイルを打ち落とすこともできます。サイバー戦争でも世界をリードしています。

しかし、「歴史の進む方向は、突然変わる」ということも事実です。ソ連が1991年に解体されたことも、ベルリンの壁が崩壊したことも、「9.11」テロが起きたことも、またブッシュが大統領になったことも、私は夢想だにしませんでした。オバマも対テロ戦争を改革していくと見られていましたが、実際にはそうしませんでした。

アメリカは軍事面で支配的な立場にありますが、専制君主制は必ず滅びます。ひょっとしたら内側から崩壊するかもしれない。この先、何が起きても不思議ではありません。

初の来日で目にした心に響く光景

大野:ストーンさんは8月に初めて来日し、被爆地の広島・長崎を訪れました。実際に被爆地をご覧になって、どのような感想を抱きましたか。

ストーン:現地では20人ほどの被爆者と話をしました。みな美しい人たちですが、ショックを受けるほど生々しい傷跡が残っている人もおり、いつガンのような病気になるかわからない恐怖と戦っています。彼らは原爆が落とされた日の恐ろしい体験談を話してくれました。『「ひろしま」奇跡への情熱』は観ましたか?

大野:いいえ、残念ながら。

ストーン:素晴らしい映画を2つも見逃していますね(笑)。アメリカ占領下の日本では、原爆に関するいかなる言説も、発表に際して検閲を受けました。そこで日本が独立を回復した1953年、広島の市民グループが被爆者の協力を得て自主制作映画を完成させたのです。当時はデジタル技術がなく、「目から血が出る」「肉がはがれおちる」といった描写が十分に表現できているとはいいがたいですが、原爆の悲惨な現実ははっきりと伝わってきます。

平和記念式典にも参加しました。被爆者本人や遺族たちが口々に「戦争反対」「原爆反対」を訴え、破壊された母校を想い、歌を歌った老人たちもいました。心に響く光景でした。

大野:その足で米軍基地のある沖縄にも行かれましたね。現地では米軍撤退を求める声が上がる一方、基地の土地所有者や米軍とビジネスを行なっている人など、「米軍に撤退してもらっては困る」という人びともいて、意見が割れています。

ストーン:経済的な観点からは、米軍基地があることで恩恵を受ける人たちがいるのは当然ですが、長期的に見れば沖縄にとって健全ではありません。沖縄にはすばらしい文化や水産業、農業があります。基地がなくても生計を立てることは可能です。むしろ基地が環境汚染をもたらし、現地の人を経済的に「奴隷化」するといったマイナス面に目を向けるべきでしょう。

私は米軍によってベトナム経済が破壊されるのを目の当たりにしました。フィリピンのスービック湾にもかつてクラーク米軍基地がありましたが、周辺の環境は無残に破壊され、醜い光景が広がっています。

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