オバマの演説は「やりたい放題宣言」に等しい オリバー・ストーン単独インタビュー(下)
日中両国よ、国粋主義に陥ることなかれ
大野:沖縄の米軍基地は尖閣諸島をはじめとするアジア・太平洋の安全保障上、日米両国にとって不可欠であり、もし米軍が撤退すれば、中国がすぐに進出するという指摘もあります。いかがでしょうか。
ストーン:そのような中国脅威論を、私は一秒たりとも信じません。中国が軍事的にアメリカの脅威となることはありえません。彼らの海外進出に対する野心はそれほど多くないと思います。中国には十分な土地があります。沖縄のような島を占領することに何の意味があるのでしょうか。
中国人は非常に頭がよく、正しい判断を下します。アメリカには中国からの移民が多いですが、どの学校でも成績がトップなのは中国系の生徒たちです。彼らはアフリカやヨーロッパ、その他のアジアの国々など、世界中に移住しているため、私はよい意味での「中国の影響」を世界各地に見出しています。
結局、中国の存在は、アメリカが日本に駐留し続けるための言い訳にすぎません。9月にはケニアのショッピングモールで、テロリストによる乱射事件が起きましたが、これもアメリカがケニアに介入する口実に使われています。
このように「狂犬病」にかかっているアメリカを落ち着かせるためには、もっと多くの中国人をアメリカ国内に入れるべきでしょう。一般的に、欧米人に比べてアジア人は戦争を好みません。中国人には長期的な平和を実現する能力があると思います。
大野:安倍政権が発足し、保守的な政策を次々に打ち出すなか、中国・韓国、そして『ニューヨーク・タイムズ』紙などアメリカの一部のメディアは、「日本は右傾化している」と報道しています。ストーンさんはどのようにお考えでしょうか。
ストーン:日本が右傾化していることは確かです。最近では憲法改正論者が勢いを増していますが、ここでも中国が言い訳に使われています。中国の行動を一つひとつ分析していけば、彼らの論理が説得力をもたないのは明らかです。日本の憲法は美しい理想を体現しており、これを変えてはなりません。安倍首相は日本の軍国主義がアジア各地にもたらした怒りを十分に認識していないように見えます。
私の妻は韓国人で、多くの知人が韓国や中国にいますが、彼らは日本人の傲慢さを軽蔑しています。日本人の謝罪は「本当の謝罪」ではなく、心に響かないそうです。
韓国での慰安婦、中国での大虐殺、満州での人体実験、細菌戦争など、日本軍はヒトラーのような虐殺行為をしました。
大野:最後に日本人へのメッセージをお願いします。
ストーン:私がいいたいのは3つです。「平和を信じよ」「立派な憲法を変えてはならない」「中国を怖がってはならない」。最後の点に関していえば、日本は第3位の経済大国で、中国は最大の貿易相手国です。いわば日中間には「自然な同盟」があるといってもいい。必ず仲良くできます。両者とも国粋主義的になる必要はありません。尖閣諸島問題についても、一塊の島がきっかけで戦争をするほど、愚かなことはありません。お互いを信用すれば、必ず解決できます。外に敵をつくるのではなく、話し合いのなかで問題を解決する。それこそが文明国のあり方なのです。
(『Voice』2013年12月号より)
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