杉原教授が語る「錯視」―不思議な世界の秘密 ベストイリュージョンコンテストで3度優勝

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杉原 厚吉(すぎはら こうきち)/明治大学先端数理科学インスティテュート所長、同大特任教授。東京大学名誉教授。岐阜県生まれ。1971年東京大学工学部計数工学科卒業、80年工学博士(東京大学)。通商産業省電子技術総合研究所研究官、名古屋大学工学部情報工学科助教授等を経て、91年東京大学工学部教授。2009年明治大学特任教授。著書、受賞論文(情報処理学会、電子情報通信学会、日本芸術科学会等)多数。錯視研究でも世界的に著名。(撮影:今井康一)

第2世代「不可能モーション」:一見、普通に見える立体が、球を転がすとか棒を差し込む動作によって、ありえないとわかる。「窓と棒」は、ありきたりの立体に、変な動きで棒が入ってゆくように見えますが、本当は立体のほうが、見え方とは違う変な形なのです。画像情報に奥行きがないことを利用し、立体を実際と違う形だと思わせます(右の坂道を転がって上る球「四方向反重力滑り台」の動画はこちらで見ることができます)。

第3世代「変身立体」:ある方向から見ると特定の形に見える立体は、無数にあります。そこで、別な方向からは違う形に見えるように、方程式を連立させて解けば、見る方向によって姿を変える立体ができる。

丸い柱が、反対から見ると四角く見えたり、ガレージの丸屋根が、鏡に映すとギザギザに見えたりします。画像に奥行きがない性質を、二重に利用したわけです。

ガレージの屋根とその解説図を見てください。仮想的な平面上で、第1の視点Eからは青い線に、第2の視点Fからは赤い線に見えるように、方程式を連立する。これを解くと、緑の線がその答えになります。さらに錯覚を強化するため、元の平面に垂直な線分が緑の線に沿って動くとき掃き出す平行四辺形を加えます。

すると、直角が大好きな脳は、これが長方形だと思いたくなる。その結果、出入り口の大きく出たり引っ込んだりした緑の線が、垂直な断面でスパッと切った、平らな切り口に見えてきます。加えた平行四辺形の辺が等長なので、視点が多少ずれても長方形と思い、それで緑の線が、平面による切り口に見えるのです。

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