平壌が恐れるのは中国の支援を受けたクーデター
元議員:中国と北韓の関係は、ずっと安定的なわけではない。実際、北韓がいちばん恐れているのは中国の支援を受けた反体制派によるクーデターだ。これを指導部はたいへん警戒している。経済力がなく仕方ないので中国と表面上仲良くやっているが、内実、中国をいちばん警戒している。
ムーギー:そうなのですか。北朝鮮はてっきり中国の支援に深く感謝していると思っていました。この話題の最後ですが、仮に南北が統一されるとしたら、どのようなプロセスをたどりますか? 東西ドイツのケースに比べて、あまりに南北の所得差が大きいので、やはり金大中大統領がおっしゃられていたように、連邦制を基軸に統一していくのでしょうか。
元議員:私は連邦制だけが解決策だとは思わないが、とにかく最初の段階では来る統一の日に備え、両国の交流を活発にしていくことが最重要課題だ。
北の体制は今の指導部の世代で終わると思う。金日成主席は日本の植民地支配に対する抗日運動で成果を上げたとして、実際に尊敬を受けていたし、強いカリスマ性を持っていた。また息子の正日はつねに日成と同行していたので、日成のカリスマ性を学ぶ機会があった。しかし正恩はその機会が十分にないところに、突然、指導者の地位に着いたので、民衆がついてきていないし、カリスマ性も伝わっていない。北の体制はこの3代目時代で終わると思っている。
日本は過去を乗り越え、健全な自信を持つべき
ムーギー:それでは最後に対日外交についてお伺いします。今後、日本に対して、どう政策が変わっていくと思われますか。
元議員:私は朴大統領とは違う党なので、詳しくコメントできないが、朴大統領が日本の首相に会う前に中国の首脳に会うことを選んだことが、日本で大々的に報道されたと聞いている。
日本に対しては過去を乗り越える勇気を持てば、韓国と日本は史上まれにみる緊密な兄弟の関係になれるのに、それが長らく実現していないのは極めて残念だ。景気が悪い状態が続くと、戦前のアジアで最も強力な国だった時代が懐かしくなる気持ちはわからなくもないのだが。
10年ほど前、ジュネーブの日本大使と食事で臨席したことがあって、日本は過去を真摯に受け止めれば東アジアでリーダーシップをとれるのに、なぜしないのか理解できない、という話をしたところ、われわれは東アジアでリーダーシップなんてほしくない、アメリカとの関係がいちばん重要だという回答が返ってきて驚いた。
ムーギー:それは10年も前の話ですから、現在は状況も変わっていると思いますが……。
元議員:いや、まだ根本的には変わっていない。たとえば以前の従軍慰安婦をめぐる政治家の問題発言でも、アメリカが怒って初めて、韓国に対して謝罪した。アメリカの顔色さえうかがえば、という根強い政策を感じる。
日本の政治家は、アジア諸国に対して戦時の行為を謝罪しては、それを繰り返し否定するのは、次世代のためにならないのは明らかなのに、なぜ繰り返し否定するのか本当に理解できない。一度認めたことを、繰り返し覆そうと蒸し返さなければ、韓国も何も言うことはないのに、極めて残念だ。
ムーギー:アメリカは国力が相対的に衰え、アジアは相対的に大きくなっているので、日本の政策もいつかは変わると思うのですが。
元議員:日本は長らく、たとえばG7で唯一のアジアの国であったこともあり、アジアのリーダーという自負心や優越感を持ってきた。これが周辺国と経済格差が縮まり、分野によっては抜かされるようになって、自身やアイデンテティが揺らいでいるのだろう。ただ、日本経済が成功して安定することは、東アジアの安定にとって非常に重要なので、日本には健全な自信を持ってほしい。
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