日本の研究が中韓台の後塵を拝する本質理由

理系人材の「選択と集中」がIT遅れを招いた

なぜ、日本のコンピュータ・サイエンスは世界に後れを取ってしまったのか(写真:PIXTA/freeangle)
サイバーセキュリティ基本法改正案を担当する桜田義孝五輪相が「パソコンを打つことはない」と国会で発言し、海外メディアから日本の“IT遅れ”が皮肉られている。実は、日本の“IT遅れ”は研究分野でも起こっている。どうすれば日本のイノベーション力を高められるのか。東京工業大学環境・社会理工学院教授梶川裕矢氏に話を聞いた。

IoTやAI……インターネットはもちろん、新聞やTVでこの文字を見ない日はない。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめ、世界の企業はスタートアップも含めてこのキーワードを中心に回っているように見える。しかし、ふと気がつけば、日本はこの分野で周回遅れになっている感がある。なぜそうなってしまったのか。

今からこういった分野に力を入れても、この後れは取り戻しようもない。そもそも、コンピュータ・サイエンスでこれらが注目されるようになるというのは、もう10年も前に見えていたことだ。「計量書誌学という分析手法で当時の論文の引用関係を分析すれば、そういったキーワードが浮かび上がる」と東京工業大学の梶川裕矢教授は言う。

当記事は「POLICY DOOR」からの転載記事です。図表の出典等は元記事をご覧ください。元記事はこちら

世界の潮流に遅れないように、あるいは世界に先駆けて科学技術イノベーションを実現するにはどうすればいいのか。そのために必要なことは何か。どのような政策があればイノベーション力を高めることができるのか。それが梶川教授の問題意識だ。

最初にそう思ったのは、もう20年ほど前、まだ学生だったときだという。当時、半導体材料の研究をしていて、大量の論文を読んだ。そうすると、同じ分野で研究していても、互いにほとんど認知していないケースがあるように思われた。

読み切れない大量の論文

窒化アルミ(AIN)と窒化チタン(TiN)の結晶の配向性の研究
窒化アルミと窒化チタンは同じような物性を持ち、半導体プロセスにおいて同じ用途に用いられる材料であるにもかかわらず、その物性を決める結晶の配向性に関して異なるモデルが採用されていた。特定の研究コミュニティで研究を行う研究者が、引用関係をたどって別のコミュニティの論文にたどり着くのは極めて困難だが、可視化してみると一目瞭然である

その後、博士論文をまとめるにあたっていろいろ調べると、論文や特許などの文書をデータとみなして、それを定量的に分析するという方法があった。計量書誌学である。そのなかに引用ネットワーク分析というのがある。論文の引用関係を分析し、論文と論文の関係や距離を分析する。それを使って、自分の研究の引用関係を書いてみた。その研究とは、半導体に使う窒化チタンとか窒化アルミの結晶の配向性の研究だ。

そうすると同じ配向性という現象を対象にしているのに、2つのグループにくっきりと分かれていた。本来なら論文の引用関係なのだから1つにまとまっているはずなのに、2つに分かれていて、しかもその間はごく細い線でしかつながっていない。

2つの小島があってその間に小さな渡し船しかないと、小島同士の行き来はどうしても少なくなる。これでは論文のリファレンスから論文をたどっていくという従来のやり方では、本来見ておくべきすべての論文を参照することはできない。

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