日本の研究が中韓台の後塵を拝する本質理由 理系人材の「選択と集中」がIT遅れを招いた

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「Nokiaが負けたのは技術だけではない」という問題意識の下に、フィンランドはビジネスエコシステムやプラットフォーム戦略を研究するために巨額の研究資金を投じている。ハード「技術」信奉の強い日本では、そのような人文・社会科学に巨費を投じるということは考えにくい。

一方で、技術プッシュではない、新たな将来や未来社会を構想するためには、歴史学や哲学に裏打ちされたビジョンや、それを社会において実現するための法律・政治学、経済学・経営学、地域や文化、コミュニケーションといった人文・社会系の知識や知恵が必要となる。

押し寄せる高齢化の波、そして人口の減少。日本が直面しているのは、世界で誰も経験したことのない社会的な構造的変化だ。年金や医療、介護などの社会保障が大波をかぶるというだけではない。

右肩上がりの時代に築き上げられてきたさまざまなシステムが、制度疲労を起こしているように見える。その大変化の時代をどうやったら乗り切れるのか。やや大げさな言い方だが、日本の存亡がこの課題を解決できるかどうかにかかっている。

国の成長力を左右するもの

梶川裕矢/東京工業大学環境・社会理工学院教授。東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構教授(写真:Ryoma K.)

GDP(国内総生産)を伸ばすことだけが、国民生活を豊かにするわけではない。しかし、一人当たりGDPが伸びなければ、教育や子育て、高齢化で費用が膨らむ一方の医療や介護などを維持することはできない。

生産年齢人口が確実に減るなかでは、社会の生産性を上げ、高付加価値化を追求するのは重要なことだ。そして、経済成長力を支えるのはイノベーション力だという研究成果も発表されている。その研究でイノベーション力は「科学技術×教育× ITインフラ」と定義されている。

しかし、日本の現状はどうだろうか。2017年に発表された『Times Higher Education』誌の世界大学ランキングで見ると、ベスト100に入っている大学は東京大学と京都大学の2校だけ、しかもその順位は46位と74位だった。アジアでもシンガポールや中国の大学に毎年のように追い越されている。それがただちに日本の教育力・研究開発力の低下を物語るものではないとしても、何らかの問題があることは否めない。

大学のランキングに一喜一憂しても仕方がないが、日本のイノベーション力をどうやって高めるか。この課題は、もっと国民的に共有すべきなのかもしれない。

藤田 正美 ジャーナリスト

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ふじた まさよし / Masayoshi Fujita

1948年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年から2000年まで同誌編集長。2001年より同誌編集主幹を務め、2004年に独立。日米のメディアを知る経歴を活かして、より冷静で公正な視点を求めて活動中。

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