KPIを決めるにあたっては、賃金上昇の程度と相対的なレベルで労働力の「不足度」を測るといい(補助的に労働分配率を見てもいい)。
もちろん個々の労働者のスキル・レベルによる調整は必要となるが、(1)近年の実績として賃金上昇率が相対的にも絶対的にも十分高く、(2)職種としても賃金が平均以上であるような分野では、「労働力が不足しており、スキルのある外国人を雇うことでこれを補いたい」という状況が明白だ。
仮に、介護の仕事に就く方々の賃金が、スキルに対して相対的に低かったり、近年相対的に上がっていなかったりするのであれば、介護の分野に外国人労働者を追加することは不適切だろう。人手不足を解消する外国人労働者の受け入れは介護の仕事に就く人々の待遇改善のチャンスを奪うことになる。
一方、賃金を上げて人を集めて、好条件を提示しても人が十分集まらない場合には、その職種で働きたい外国人労働者をある程度受け入れていいのではないか。
外国人労働者を追加的に受け入れてもいい業種(或いは個々の会社主)の判断指標を何らかのKPIとして提示して議論することが、国会の議論として建設的だろう。その際に注目すべきは、「賃金」だろう。賃金が十分高くなった職種、あるいは企業が外国人労働者を迎え入れるなら、日本人の労使双方にとって納得的なのではないだろうか。
賃上げしない、できない経営者に労働力の頭数を提供するのは不適当だ。
投資家の「KPI」とは何か?
さて、ひるがえって投資家にとっての「KPI」というと、投資信託やラップ運用に関わる金融機関にデータを出させて、金融庁が6月に発表したKPIが思い浮かぶ。「投信の投資家の46%が損失を抱えている」という数字が幾らかセンセーショナルに伝わったので、ご記憶の読者もいらっしゃるだろう。
今回金融庁が定めたKPIには、改善を要すると思われる点が多々あるが、公表されたデータから、2つのことを言っておきたい。
まず、近年の株価が好調な状況で「46%が含み損」という状況の大きな原因は、「最近買った投資信託が少なくないだろう」ということだ。「含み損」に注目するデータの採り方にも問題があるのだが、「高値で買うと儲けにくい」、「短期間では儲けにくい」といった当たり前の傾向に投資家自身が注意を払う必要がある。
そして、対面営業を中心とする金融機関が顧客に対して支払わせている「コスト」(≒手数料)はおおよそ年率2%程度の水準に集中している。年率2%というと、1000万円の資金の運用をするに当たって年間20万円もの手数料の支払いだ。これだけの手数料を払うのでは顧客である投資家が満足な利益を得ることは難しかろう。
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