カジノが日本の国際競争力を高める根本理由 明暗を分ける中国人富裕層の取り込み

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ただ、個人的な感覚としては、これらの話の99%は詐欺話です。理由はいくつかありますが、最大の理由は大手カジノ会社やジャンケット会社は十分に儲かっているからです。潤沢な資金をすでに持っており、わざわざ一般人から出資を募る必要がありません。

また、ひとつのVIPルームを運営するのに、70億円ほどかかるといわれているので、一般人から些少の出資金を集めた程度では運営できる規模感ではないのです。

また、カジノは運営が非常に難しいため、運営にはMGMやサンズグループなど、大手のカジノ会社かジャンケット会社が介入しています。大手の企業の人間が関わっているのではない場合、詐欺である可能性が非常に高いと言えます。

実態を知らない議論や規制は無駄

最後にお伝えしたいのが、カジノ運営はやり方次第で、日本の経済を循環させる砦となりうるということ。それは、マカオやシンガポールの成功事例を見ても明らかです。

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最大の肝となるのが、すでに成功例を持つ海外のカジノ会社やジャンケット会社のノウハウをきちんと取り入れ、中国人を中心とする海外からの富裕層の獲得に注力できるかどうかという点です。

極論を言えば、普通の観光客の集客や日本国内の需要は一切無視したとしても問題ない。それだけ、富裕層が落とすカジノへの資金は莫大なものです。

現在、日本で建設されるカジノにはジャンケット業者を入れないという声もささやかれていますが、ジャンケットのノウハウや富裕層へのネットワークを使わずに、富裕層を獲得できるのかは疑問の余地が残ります。実態を知らないなかでの議論や規制は無駄でしかありません。

世界の事例に学びつつ、外貨獲得に注力する。それが日本のカジノを成功させる、唯一の手段ではないかと思います。

尾嶋 誠史 カジノエージェント

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おじま まさふみ / Masafumi Ojima

1977年栃木県宇都宮市生まれ。中学から陸上競技を始め、高校、大学と長距離種目に熱中。25歳のときに、ある事業家と出会い、お金と時間の両立を求め「行きたいときに世界中の行きたい所へ行く生き方」を決断し独立。マカオのカジノでエージェントとして働きながら、香港や日本でも貿易など幅広くビジネスやコンサルティング事業を行う。

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